「せっかく日義の件がひと段落しそうなんだ。少しくらい咲桜をくれ」
「~~こんなの神宮じゃねー!」
今度は泣き言を言って飛び出して行った。
「騒がしい奴だな」
「あの、ごめんなさい。私が止めるべきでした……」
咲桜は恥ずかしくなったのか、そろそろと膝から降りようとする。
「なんで離れる?」
「流夜くん、場所はわきまえよう」
「――咲桜の言う通りだ! つかやっぱあのガキはてめえの仕業かよ!」
また戻ってきた。
遙音が飛び込んできた勢いも手伝って、咲桜は離れてしまった。ちっ。
「忙しない奴だな、お前は」
咲桜は人目があるのが気になるのか急に慌てだしたので、摑んでいた手を離す。
「――って先輩! まさか頼、もう行ったのっ?」
……さっきから遙音が、思い当ってしまう人物がしそうなことで騒いでいる。
「あ? ああ、そういや咲桜ともよく一緒にいるよな、一年の首席。なんなんだあいつ。いきなり教室に来て写真撮らせろとか迫ってきたんだけど。若干制服剥かれそうになるし。マジ怖ぇ」
「あのバカー! ごめんなさい先輩!」
悲鳴のような叫び声をあげて、咲桜は腰から折って頭を下げた。
「咲桜が謝ることなのか? すぐにここに逃げて来たんだけど」
咲桜はまた頭を抱えた。
「……私が初代の被害者なので。止める位置もやらねばと思っていました」
「お前も被害者かよ……。なに? 左右対称がカンペキに近いとか騒いでたけど。あいついつもぼけーっと寝てねえ?」
「……基本ぼけーっと寝てるんだけど、好みの対象を見つけると暴走するんです」
「怖―な」
「そんでさっきまでの被害者が流夜くんです」
遙音は胡乱な瞳で俺を見て来る。
「……神宮、お前俺を売ったな?」
即バレた。
「左右対称がなんだって? 写真に撮るほど?」