そう言われても、すでに流夜くんの膝の上にホールドされているので、私はこれ以上近づきようがない。
「こっち向け」
促されて顔を向けた。―――触れてもいい、二日ぶりの、流夜くん。
私も感極まってしまい、その肩に額を押し付けた。
頼のことは、どうすれば解決するかわからなかった。
と言うかそもそも、私に対しての執着も解決していないのに――十年がかりでも解決してないのに。
頼に目をつけられてしまえば最後だ。一生追いかけられる。一生なんてまだ生きてないけど、そんな気がする。
だから流夜くんのことは知られたくなかった。
ただでさえ複雑な環境の流夜くんを、頼みたいな危険物――人物ではなくて危険物に、近寄らせたくない。
友達だけど、あの性格が出てしまうと注意しないといけない。
私はこの十年頼に絡まれていたからもう諦めているけど、もっと早くにどうにかしておけば、自分を伝って流夜くんのことがばれることもなかったのに。申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
「……ごめんね、流夜くん」
あまりに私が気落ちしているからか、流夜くんが優しく髪を撫でてくれた。
「俺は大丈夫だ。もう気にしなくていい。咲桜……本当にお前、危険なことなかったか?」
「頼が危険物だからそれ以上の危険はない」
「せめて人物って言ってやれ」
流夜くんの声は平坦だった。
「……咲桜が怖がることや嫌なことを、日義はしなかったか?」
「そういう心配はないよ。大丈夫」
「そうか」
なら、一安心か。流夜くんが小さく言った。
「咲桜、顔あげて?」
「………」
伏せがちだった私の瞼も一緒にあがった。
流夜くんの手が、そっと首筋に触れる。最初に問われたときは過呼吸に陥ってしまったけど、少しずつ大丈夫になってきたみたいだ。
桜と月は、私の首元に、つけたときと変わらずある。