「そんなことはどうでもいい! 咲桜以来の黄金比率ですから絶対逃しませんよ。実は先生には以前から目をつけていましたからね」

「………」

怖い。

頼は懐からカメラを取り出した。一眼レフだった。どこに隠してたんだ。

「さあ先生! ――いや咲桜、普段は先生をどう呼んでいるんだ?」

「え、流夜くん……?」

「マジか! じゃあ流夜くん感を出さないと……」

どんな感だ、それは。

ぐいぐい迫ってくる頼は、こいつってこんなにアクティブだったか? と信じられないほどテンションが高い。

「さ、咲桜? な、んなんだこれは……? 遙音といい、ここの首席は変わったのばかりなのか?」

最早、教師のツラをする余裕がない。

正直、目の前の生徒から身の危険を感じる。

「はるおと――? 夏島先輩のことですか? 先生、夏島先輩とも知り合いなんですかならば是非紹介してください! この前笑満が連れて来かけたんですけどなんか逃げられたんで――先輩のこともなかなかの逸材と思っていたところですっ」





「ごめんなさい……」

「いや……お前が謝ることではないけど……疲れた……」

結局、写真を撮られることがまずい俺は、遙音を生贄にして日義から逃げてきた。

自分の写真は駄目な代わりに、遙音を紹介する、と言うと、日義は渋々ながら引いた。

旧館の資料室に入って、ぐったり椅子にもたれかかった。

傍らには咲桜が、申し訳なさそうに立っている。

「でも、大丈夫かな、遙音先輩……」

「あいつはノリがいいから喜んで受けるんじゃないか?」

咲桜は未だに申し訳なさそうな顔をしている。

それが気に入らなくて手招きすると、すぐに傍までやってきた。

「大体、なんなんだ? あいつは。日義ってあんな性格なのか?」

咲桜の指を絡め取り、そのあたたかさに癒される。

一日ぶりの咲桜だ。少しくらい触ってもいいだろう。

咲桜は困ったような顔で話し始めた。