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「………」

咲桜がいないと部屋すら広く感じる。

咲桜が来なくなったのは昨日から。

――と言っても、昨日は龍さんのところで逢えたわけだから、それから数えたってまだ一日だ。

……まだ、一日だ。

「……俺はアホなんだろうか」

思わず呟いてしまった。

学生時代、女子の面倒さ加減には嫌気がさした。

だから、『彼女』がいる理由がなくなった大学卒業頃からは恋人付き合いしていた人もいない。

恋人がいなくてもすきな人がいなくても問題を感じたことはなかった。

むしろ、自分の生きている道を見ればそういう存在は枷(かせ)にしかならないように思っていた。

それが九つ年下の子に翻弄されるようになろうとは。

呟いて、なんだか淋しさが増した気がする。

咲桜だって、朝までここにいたのは一度きりだ。

夕飯を作ってくれて、在義さんが遅くなる日は一緒に食べて、勉強を見て、吹雪のところへ行く前には華取の家へ送って行った。

一緒にいられた時間はほんの少しだ。その、ほんの少しにどれだけの力をもらっていたか。

「………」

まさか、このまま逢えないなんてことにはならない……よな?

咲桜が傍にいないことを思えば不安になってしまう。なんだ、これ。自分女々しいな。

大体なんなんだ。幼馴染にばれたからってなんでここまで仲を乱されなくちゃいけない。

……あれ? まさか。

昨日の吹雪の声が甦ってきた。もしかして咲桜って……。

日義のことが、すき?