気は晴れないでいた。

昨日の夜、手を握って、咲桜の指が震えているのにたまらずそのまま咲桜を抱き寄せて、しばし腕の中に置くことは出来た。

抵抗はなく、だんだんと体重を預けてくれた。

……それでも、なにを思い悩んでいるのか、最後まで教えてはくれなかった。

咲桜の彼氏が自分であることは確実に頼にばれている。

教師とイコールだと気づいているかまでは、まだわからない……。

咲桜はそう言っていたけど、後者も知られている可能性が高いのだろう。咲桜があそこまで人目を警戒して怯えるのは。

日義は咲桜の友人だ。咲桜がゆるせば、付き合っていることや偽婚約のことを話してもいいと思っている。

しかし初めて旧校舎で――学内で咲桜と逢ったとき、咲桜は日義に言うことを否定した。

名前を出して、『頼には言いたくない』と。

やはり異性の友人では、同性の松生とは勝手が違うのだろうか。

俺の方で話したのは吹雪や降渡だけだから、そこは想像するしかなかった。

わかるのは、咲桜が警戒していることは、自分と付き合っているとばれた、だけではないということだ。

それ以上に日義に知られてしまったことがあるのか? 

――咲桜の出生、そして俺の家族にあったこと。俺たちにおいて大きな問題といえば共に家族のことだ。

日義は小学校からの幼馴染だという。咲桜の家族の方は知っていてもおかしくない。

それとも今頃知られて混乱しているのだろうか。

あるいは神宮家(うち)の件。