「よかったね。お姫様の声が聞けて。しかも龍さんとこで密談なんてねー」

吹雪はさも愉快そうに口を歪めている。

俺は、耳に焼き付く咲桜の声が響いて、胸が熱くなる。やっぱり、愛しい――

「別れ話だったりして」

「……!」

意地悪く聞こえてきた声に、思わず顔をあげた。にやつく吹雪が見ていた。

「咲桜ちゃんの家もダメ、流夜の家もダメ。話せる場所は外だけ。……ちょーっと危ないんじゃない?」

「っ……」

まさか――そんなことがあるのだろうか。でも確かに咲桜は言いにくそうだった。

「流夜。これからも付き合っていきたいんだったら、色々学びなよ?」

吹雪の声だけが、冷たく響いた。





「なんで外にいるの!」

「え……」

店の外で待っていたら怒られた。

龍さんのカフェは、警察署のすぐ近くにある。咲桜の家より署からの方が近いので、俺は咲桜が言った時間より大分先に店先にいた。咲桜も十分も早く来た。

今日は咲桜のクラスの授業がなかったから、昨日の夕方華取の家で別れて以来だ。

まだ一日しか経っていないのに、どれだけ逢いたかったのだろう――。

「ごめん! 出直す!」

宣言して、くるりと踵を返した咲桜。な、なぜ⁉

「おい、咲桜どうしたんだよお前――」

「ごめん、やっぱり電話にする! 逢いたかったけどダメだった!」

「はっ? なに言ってんだ咲桜――」

「店の前で騒ぐなガキ共」