俺の耳に心地いい声が響く。
『流夜くん、あの、どこにいる? 家?』
「いや――今は吹雪んとこ。学校から直接来た」
『そっか……あの、今日は行けなくてごめんなさい。……少し、時間作ってもらってもいい?』
「あ、ああ。咲桜の家に行けばいいか?」
『ううん、うちはちょっと危ないから、龍生さんのところで話したいんだ。時間は……三十分後でもいい?』
「あ? ああ、わかった。迎えに行かなくても平気か?」
『そこまでは大丈夫。ありがとう。吹雪さんに取り次いでくれてありがとうって伝えておいて』
「わかった。……気を付けて来いよ」
『うん』
「………」
『………』
「………咲桜」
『うん。……今日、行けなくてごめん』
「いや、むしろ今まで毎日来てくれたありがたみがわかった。……無理させていたら、すまなかった」
『いや! いやいやいやっ、無理なんてしてない。私が自分から言い出したことだし。――だから、早くまた、行けるようにするから』
「……その辺り、聞けるのか?」
『……うん。話す。……じゃあ、ね』
「ああ……」
躊躇うような息遣いが聞こえて、やっぱり通話終了には出来ない――でいたところへ。
「あのさ、それ僕の電話なんだけど。他人のツールで青春しないでくれる?」
安定の、吹雪の乱入。相手側にも聞こえたのか、咲桜から慌てた声がした。
吹雪が俺の手からさっとかすめとる。
「咲桜ちゃん、道中気を付けて。もし本気で危ないことになりそうだったら、不良探偵の貸し出しも出来るから。うん……わかった。気にしないで」
じゃあね、と、吹雪はなんの感慨もなく電話を切った。