「咲桜ちゃんが家に来ない?」

今日も吹雪の手伝い(?)中。ため息をついた。

「ああ……。今日の昼に連絡来て、用事が出来て旧館に行けなくなったってのと、夜も行けないって」

「それでこんな早くにこっち来たんだ」

吹雪はにやついていやがる。

時間はまだ八時過ぎ。いつも俺がここに来るのは十時過ぎだから、何かあったとは思っていたんだろう。

「でも、そこまで凹むことなの? 咲桜ちゃんだって家の用事とかで一日くらい来れないことあるでしょ。そこまで束縛しちゃ可哀想っつーかストーカーっぽくて気味悪くない?」

「………自分でもそう思う。情けないこと言ってるなって自覚はある……」

あるんだ、と吹雪はくすりと笑った。またあとで降渡とからかってくるんだろう……。

慣れた。

「自覚はあっても落ち込まずにはいられない、と」

「そんな感じだ……。一日咲桜に逢えないだけでここまで落ちるとか、アホみてえ」

「みてえっつーかアホだよ。まんま、ね」

「そーかい」

今日も通常運転で毒舌な吹雪に、助けを求めたりしない。

「流夜の場合、ちゃんとした恋愛は咲桜ちゃんが初めてだから、まあその辺り咲桜ちゃんと一緒に学んでいけばいいんじゃない? 流夜は中学生レベルの恋愛から始めた方がいいよ」

「………」

俺はそこまで非道いのか。実際、非道い自覚もあるけど、咲桜が高校生なのに俺は中学生レベルなのか?

咲桜に逢えないためか覇気もなくのろのろと資料を繰(く)っていると、吹雪のスマホが着信を告げた。すぐに応答した吹雪。話しながらこちらへ歩いてくる。

「? 吹雪?」

「流夜へだよ。お嬢様から」

ひったくった。

「もしもっ、咲桜か?」

勢い込み過ぎて噛んだ。吹雪は腹を抱えて笑っているけど、気にしている余裕もない。