「咲桜?」
後ろから笑満が顔を覗かせた。途中で委員会の先生に呼び止められていて。私より遅れて来たんだ。
……笑満には。
小学校時代、笑満が転校してくる前のことではあるけど、頼が私にしたことを知っている。知っていて、私たちの友達でいてくれる。
流夜くんのことも話したように、頼の言葉も話しておいて大丈夫だと思う。――話してしまって、少し気持ちを軽くしたかったのも本音だ。
すぐにホームルームになってしまったので、私は一限の放課に笑満を連れ出すことにした。
頼は、やはりなにか気づいているのだろうか。休み時間だと言うのに机に突っ伏さずに起きて、誰ともなしに辺りを見ていた。
見咎められる、あるいは一緒に来ると言い出すかと思ったが、私が話したい様子を察した笑満の誘導でうまく教室を抜けられた。
「ごめんね、笑満……」
「いいから。……夜々さんとこ行く? あそこなら少し落ち着くでしょ」
顔色悪いよ。気遣われて、自分の頬に手をやった。たった少しの時間なのに憔悴しているのか。
我ながら情けない……。
頼は大事な友達だ。けれど、厄介な幼馴染でもある。
捨て置けるような存在ではないけれど、たやすい相手でもない。
……私の中の弱さと強さが混在する、ただならぬ友人だった。