「咲桜、昨日一緒にいたの、誰?」
「え?」
教室に入ってすぐに頼に捕まった。寝惚けていなくて、入り口に立ってまるで私を待っているかのようだった。
「昨日?」
――は、流夜くんと一緒だった。楽しく一日デートしていた。
……まずい。
「あ、昨日はね、父さんの関係でおつかいに行ったよ。そんときに何人か逢ってるからどの人かわからないんだけど……」
「在義パパの?」
「うん。仕事関係だから、頼にも言えない。ごめんな」
顔の前で両手を合わせて謝ると、頼は「ふーん」と唸った。
私が在義父さんに関わることで手伝いをしてることは知っている頼だ。なんとか言い逃げしたけれど……。
まずい……まさかとは思うけど、頼に見られていたんだ……。
こいつ、マナさん並に神出鬼没だからな……。
前後して吹雪さんや降渡さんとも逢っているから相手が流夜くんと特定されているかはわからないけど、ずっと一緒にいた流夜くんである可能性が図抜けて高い。
普段の流夜くんと学校での『神宮先生』は雰囲気まで変わってしまうから、私が一緒にいた人イコール神宮先生とはわからないかもしれないけれど……。
そう言えば、流夜くんは降渡さんと吹雪さんに対してはデート中も警戒していたようだ。こんなことなら頼のことも伝えておくべきだった……。
警戒対象を増やしてしまうのは心苦しいけど、今の私たちは周囲に注意を向けなければいけない関係なんだ。
……元々、起きてるときの頼はどこに目があるかわからない奴だったから、気を付けないといけない奴ダントツだったのに。
最近大人しいから油断していた。
……それに加えて、大すきな人の彼女になれて浮かれていた事実は否めない。