流夜くんも家族を殺されたと言っていた。先輩も同じように家族を亡くしているということか……。『ご飯を作ってくれるような家族はもういない』、とも言っていた……。

「……話して、いい?」

「うん」

不安そうに揺れる笑満の声。その片手を握った。

「遙音くんのお父さんの、仕事関係でトラブルがあったんだって。恨みを持った人が、夜中に侵入して、遙音くん以外はみんな、……殺された」

「………」

手を、握り続ける。

「犯人は、少しして捕まった。……んだけど、その動機が明るみになって、遙音くんのご家族が悪者にされたの。被害者なのに。……遙音くんのお父さんが、仕事の面で犯人を不当に扱ったとか、そういった感じで、世間は犯人に同情的になった。……言いたくはないけど、殺されても仕方ないって、いう言葉も聞いた。……そん中で一人生き残った遙音くんを、世間体を気にした親戚は引き取るとか出来なくて、施設に入ったの。それきり、遙音くんとは逢ってなかった。あたしもその後に引っ越したし……。……藤城に入って、遙音くんがいて、笑っていてくれて、嬉しかった。きっと哀しいだけのことだから、昔の知り合いを名乗るのはやめようって思った。先輩として、すきになったんだって。……すきだったから。あの頃からずっと、遙音くんのこと、すきだったから。……遙音くんがいなくなることを、あたしには止める手段なんかなくて、いつの間にかいなくなってしまって……。だから、あたしは後輩として遙音くんをすきになったんだって、新しく思うことにしたの。……最初に流夜くんに逢った時、遙音くんがいたでしょ?」

「………」

こくりと肯く。