呟きのような密やかなそれは、後悔の響きとは違った。
五月の空。幼い頃の笑満と先輩は、同じ空の下にいたのだろうか。今は? 記憶ではなく時間も戻らない今に生きる、二人は?
並んでいる? 近くに、いる?
「……しばらくはね、告白はしないでおくつもり」
笑満は鞄を後ろ手に持ちかえた。
「しないの?」
すごく仲がいいのは傍から見てもわかるのに。
笑満の特攻精神をわかりきっている私には意外な言葉だった。
「うん。……少し、友達として時間を取り戻したいの。ずっと一緒にいられたかもしれない時間が、やっぱり淋しいから……」
一緒にいられたかもしれない、過去の時間。友達として、幼馴染として。
……そんなものは存在しないものだと、笑満ならばわかっているはずだ。苦しみの只中に立たされたことのある笑満なら。そして、その只中から手を引かれた笑満ならば。
「わかってるのに、そういうの、ないものだったんだって、わかってるんだけど。やっぱり、なんかまだ後悔しちゃって……。……だから、少し整理つくまではこのまま、今の遙音くんの助けになれたらいいなって思ってる」
「……そっか」
助けになれたら。笑満らしい言葉だ。転校生として逢ってから、笑満は常に私の助けだった。
「咲桜は? もう、首は大丈夫なの?」
今日も普通のブラウスだけなのを見て、笑満は私の顔を覗き込むように首を傾げた。