咲桜と離れがたいのを頑張って離れて、華取家に置いて、ちゃんと鍵を閉めるところまで確認した。

在義さんが戻ってくるまでいようかとも思ったけれど、自分なにを仕出かすかわからない。

それに、今日在義さんは俺を避けて家に帰っていないんだ。泥沼にもしたくない。せっかくちゃんと、咲桜と恋人になれたのに。

『朝間』と書かれた家の、インターホンを押す。出来れば一番顔を合わせたくない人だが、現状咲桜の安全には一番効力のある人だ。

すぐに戸口が開いた。出てきたのは小柄な老女だった。

「どちら様でしょう?」

女性は小首を傾げて優美に問いかけてきた。しっかり伸びた背筋。着物を着ていて、しゃんとした様子が伝わってくる。

………。

「ご存知かと思います。華取咲桜さんの、見合い相手です」

そんな風に名乗ると、女性はふわっと唇に笑みを見せた。この方、俺の正体を知って問いかけている。

「然様(さよう)でしたか。確か神宮流夜さん。私は朝間箏子。咲桜の師匠ですよ」

朝間――咲桜が何回か口にしていた師匠とはこの人だったのか。

「娘をお呼びですか?」

……疑うまでもなく、朝間先生の母親だ。

「いえ。在義さんも信頼する方と伺い、お願いに参りました」

「あら、なんでしょう?」

「今、華取さんの家に咲桜さんしかいません。交際の報告に来たら在義さんとすれ違いになってしまいまして。俺が遅くまでいるのも問題でしょうから引いて来たのですが、一人にしておくのも危険かと思い、気にかけてやってほしいとお願いに来ました」

「まあ……そうでしたか。在義ったらなにをしているのかしら。神宮さん、お手数おかけしましたわね。大丈夫です。留守がちな在義に代わって咲桜を育てたのはわたくしですから、安全は保障いたします」

「よろしくお願いします。……大事な子、なので」