顎に手を滑らせると、半ば強制的に咲桜の瞳が俺を見た。……だから可愛いんだって。

咲桜に抵抗の様子がないのを見て、羽にでも触れるように、そっとその唇に触れた。

……一番、愛情をあげたい子。

どうしてか、咲桜にしか抱かなかった感情がある。

可愛い。どうすれば伝えきるのか。言っても尽きないのはわかっているので、抱き寄せる腕にもこめてみる。すると抵抗があった。

「あの……ちょっと苦しい……」

「あ、すまん」

少し力を弱めると、咲桜が腕の中で身じろいで顔を上向けた。少し困ったような顔を、華みたいに微笑ませた。

「……やっぱり、すき」

「………」

……時々爆弾を落としてくるからたまらない。

もう一度、と口づけを繰り返して――咲桜が逃げないように、逃げたいと思わないように……大事に触れた。

この子は、一生の宝ものみたいな子だ。……俺の幸せの、象徴みたいな子。

こんなに感情が動いたのは初めてだ。

「あ」

俺が声をあげると、咲桜が小首を傾げた。

「? どうしたの?」
 
忘れるところだった。

むしろ在義さんの件がごちゃっとしていて忘れてしまっていた。

「咲桜、これ」

荷物は少ないけど申し訳程度に持っている鞄から取り出したのは、小さな箱だった。

「? なに?」

「いや……こういうのが大丈夫かわからなかったんだけど、咲桜に合うかと思って」