『実は私もお前と同じで攻撃魔法が苦手なんだが、複数属性使えるという器用なのか不器用なのかよくわからん体質でなあ…… そこで上手く活用する方法がないかと試案したんだが、中々面白い技が出来上がったんだ。これが使いこなせればお前の火力は数倍に跳ね上がるが、今のお前の魔力量と魔力制御(コントロール)じゃ扱うのは難しいかもしれねえ。今は理論だけ理解しておけ、時が来たら何れ使えるようになるはずだ』

 マルグリットは『今すぐには無理なんだ……』とつぶやきガックリと項垂れてしまった。
 
『こいつは、とにかく精密な魔力制御(コントロール)が必要で難易度が高いんだが、お前ならそう遠くない未来には使えると思うぞ』

 他人を褒めるような事を言い出す様な人ではないと知ってるので話半分で聞いていた。

『見ておけ、マルグリット。こいつを……』

 マルグリットはその光景に驚愕していた。

『こっ、これは……』






◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 





 (そうだ、このままではあの人に顔向け出来ない。
 
 圧倒的暴力から弱い者が蹂躙される目の前の光景から目を背けてはいけない。
 
 情けなくてみっともなくて無様でも構わない。
 
 何度血反吐を吐いても、泥水を啜っても、何度でも立ち上がってやる
 
 
 
 そう
 
 
 
 私は『騎士』なのだから)
 
 
 
 
 マルグリットはズタボロの身体で立ち上がり、「待ちなさい」とグランドホーンに圧を掛けて見据えると、グランドホーンは三人向かっていた足を止めてこちらに振り返った。
 
 その目は死んだと思っていた獲物が立ち上がってくるので苛ついているように見えた。
 
(ジェラール騎士団長、今こそ使わせていただきます。思い出せ、あの時の光景を…… 今の私には武器がない…… いや、この両腕こそが武器なのだ)
 
 
『魔力変質錬成』


『纒・紅焔』(マトイ・コウエン)

 マルグリットの両腕には本人すらも包んでしまいそうな燃え盛る炎が出現しており、その光景を目の当たりにしたチェスカは信じられないものを見ているかのように目を見開き身体を震わせている。
 




「騎士マルグリット、参る」