グランドホーンの至近距離による咆哮を真正面から受けてしまったマルグリットは一瞬足が止まってしまい、その隙をついたグランドホーンの前足攻撃が直撃してしまい後方に生えている木に叩きつけられてしまった。
 
「ガッ…… ゴホッ…… ゴホッ」

 マルグリットは両膝を両手を地面について四つん這いの状態で血反吐を吐きながら、攻撃手段がないか考える。
 
(ダメだ…… ダメージはそこそこ通ってるみたいだけど致命傷を与える為の手段がない)

(何か…… 何か手はないの?……)
 
 グランドホーンはマルグリットの思考などお構いなしにトドメを言わんばかりに突撃してきた。
 
 地面を揺らしながら、その巨体にものを言わせてただ突っ込んでくる。あの小さい身体に巨体でぶつかる、それだけでもはや致命傷だ。
 
(ヤバイ、身体に力が入らない)

「クッ」

(躱せない……)
 
 マルグリットはグランドホーンの体当たりをモロに受けてしまった。
 
「「マッ、マルミーヌちゃん!!」」
 
 その光景を見かねたルーシィとチェスカはマルグリットに呼びかけるが、本人は意識が飛びかけていて最早その声も届いていない

(あれ…… そういえば私はなんでグランドホーンと戦ってたんだっけ? 弟君を街に連れて帰るだけのはずだったのに……)
 
 意識が薄れていく中、三人の方に振り返っていくグランドホーンが視界に入った直後に意識が暗転した。

 
 
 
 
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 




『きろ……』

『起きろ、マルグリット』

『ンガッ!』

『ンガッ……じゃねえ、いつまで寝てんだ。訓練中におねんねとはいい度胸だ』

『あれ…… ここは……?』

 マルグリットは目を覚ますと地面に大の字で転がっており天を見上げていた。
 
 上半身を起こして、辺りを見渡すとそこはマルグリットにとって見覚えのある場所だった。
 
 (そうだ、ここはメデリック公爵家騎士団の訓練場だ。学園の夏休みを利用して騎士団の訓練に参加させてもらってるんだった。)
 
『何を呆けてやがる。打ち所が悪かったか?』

 マルグリットが状況の確認をしていると、初老の男性が上から覗き込んできた。

『いえ、大丈夫です。ジェラール騎士団長』

 ――ジェラール・ドゥ・バルジャック