私たちは馬車に乗り隣国を目指していた。王都から七日程かかる距離でそろそろ道程の半分に差し掛かるころ。

 やることもなくて窓の外を眺めていた。

「天気は悪く雨が降っており、まるで私たちの心模様を表しているようだった。」

「マルグリット? あなた、突然何を言い出してるの?」

 はっ、つい心の声が!
 
 フィルミーヌ様は綺麗な姿勢のまま、ジト目でこちらを見つめてくるが、これはこれでご褒美だと思っている。

「あなた、本当にこの三年間で性格がガラッと変わったわよね。初めて会った時は周りがたてる音にすぐ反応してビクビクする子犬みたいだったのにね」

「!!!」

 言い方の違いはあれども、やっぱり私の犬扱いは変わらないんだ……。
 
 イザベラは何かを思い出したかのように口元をにんまりさせながら首を縦に振っている。出会った当初の私を思い出しているのだろうか。そんなにニンマリする程に何を思い出しているんだ? 君は!
 
 フィルミーヌ様は口を押えながら思い出し笑いをしている。可愛すぎか、やっぱりあの王子にこの人は勿体なさすぎる。
 
 まあ、学園に入る前の性格を思い出したら自分でもびっくりするくらい今と性格が百八十度変わっているという自覚はありますがね。
 
 そう、きっかけとなったのは一年生の頃……

「ぽわんぽわんぽわん」

「マルグリット?」


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 これは私がフィルミーヌ様、イザベラと行動を共にするようになった直後辺りの話。


「あれ、今何時だっけ?」

 昔から体が弱く、外にあまり出ない私は本の虫だったので実家にいた時からお父様の書斎から本を引っ張り出しては読み耽っていた。
 
 それは学園に入ってからもあまり変わっておらず、暇を見つけては図書室に籠って本を読んでいた。
 
 あまり周りに馴染めなくて不憫に思ってくれたのか、最近仲良くして頂いているフィルミーヌ様からお茶に誘われていたので、時間まで本でも読んでいたところ読みすぎてしまったのか時間がギリギリになってしまっていた。

「じ、時間!時間ががが! お、お、お、遅れちゃったら、ど、ど、ど、どうしよう!! と、とにかく急がないと!」