このままでは通常個体の食料となる薬草が無くなってしまう恐れがあるため、あまり長期で放置すると常闇の森の生態系に問題が発生することが問題視されている。
 
 通常個体より大分強化されているため余計な犠牲者を出さないために冒険者ギルドが中心となって常闇の森を現在封鎖中で、対処可能な人員の確保を急いでいると……
 
 
 
 
 なんて間が悪すぎるのよ…… ただでさえ通常個体にトラウマ持ってるのにさらにその上が相手とか…… 
 
 悪い事って立て続けに起こるものなのね……
 
 
 ん?
 
 
 あ! 別に無理に戦う必要ないのでは? 弟君を連れ戻せさえすればいいのだし、後の事はギルドに任せましょう。
 
 よく考えたらそれにギルドが常闇の森を封鎖しているという事は中に入れないわけだし、弟君も森の外で立ち往生しているに決まってるわ。
 
 何の問題もなさそうね。あとは、家に帰るふりをして途中から『認識阻害魔法(インビジブル)』でササっと常闇の森に向かっちゃえばいいんだわ。
 
「情報提供ありがとうございます。それでは私はこれで失礼いたしますね」

「はい、お気をつけてご帰宅なさってください」

 そして私は帰るふりをした後、『認識阻害魔法(インビジブル)』で常闇の森に向かう事にした。
 
 
 
 
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
 
 


 私が常闇の森の入口付近に差し掛かった時、誰もいなかった。
 
「あれ、ギルドで入口を封鎖するって話はなんだったのかしら? 弟君もいないみたいだし……」

 考えるまでもないが、そうなると答えは一つしかない。
 
「何かがあって、ギルドから派遣された監視員と弟君が中に入ったと考えるしかないわね」

 もう頭が痛くなってくる…… 簡単なお仕事だと思ったのに。
 
「ハァ…… 行くしかないわね」

 というかどの辺にいるんだろう。気配を感じない辺り結構奥に言ってる可能性があるわね。

 私が常闇の森に入った直後の事だった。
 
「ヴオ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛」

 ぐっ、身体に圧が掛かってくる。それに聞き覚えのある咆哮…… いや、あの時よりさらに凶悪だわ。こんな距離まで影響が出るなんて、これが異常個体の力ってわけね。
 
 咆哮が発せられたという事は誰かがその場に居合わせているということ。