「バカ、万が一見殺しにしちゃったらご家族になんて説明するのよ。兎に角追いかけるわよ」

「はぁ、面倒だけどしょうがないかあ」

 二人は少年の入っていった後を追いかけるように森の中に入っていった。

 少年はルーシィとチェスカから逃げるように一直線に奥へと進んでいった。

「コラー、待ちなさい」

「ルーシィ、そんな大きい声だすと見つかっちゃうって」

「そんなこと言ってる場合じゃないでしょう。早いところ少年を連れ戻さないと」

 三人はまだ気づいていなかった。グランドホーンは案外近くまで近づいていたことを……。
 
 ルーシィはなんとか少年を捕まえると息を切らしながら尋問を開始した。
 
「ちょ、ちょっと君ィ! 薬草ならお姉さんが取ってくると言ったでしょう、なんで森の中に入っちゃうのよ!」

 少年は観念したのか、俯きながら本当に必要な素材について語り始めた。
 
「その…… 実はおばあちゃんの病気の治療に必要な素材が薬草じゃなくてグランドホーンの角なんです」

「「は?」」

 少年の唐突な内容に二人は唖然としていた。

「いや、それが本当だとしたらちょっとまずいよ。今はグランドホーンの異常個体しか見つからなくて通常個体は異常個体に怯えてるのか隠れてるっぽいのよね」

「でも冒険者さんの角の取りこぼしとか落ちてないかなと思って……」

 ルーシィは少年の意見に頭を抱えている。たしかに取りこぼしが落ちているようであれば渡すことは可能ではあるが、現在は緊急事態ということもありルーシィは応じることは出来ない表情をしている。
 
「おばあさんの容体次第かしら。どのくらい急ぎなのか解らないけど、出来れば異常個体が討伐されるまでは待ってほしい。今は中堅の冒険者ですら常闇の森に入らない事態になってるのよ。それだけ危険なの、それはわかって頂戴」

 少年は何もできずに言う事を聞くしかできない自分が悔しいのか腹が立っているのかズボンの裾をこれでもかというほど握りしめて震えている。
 
「……はい」

 ルーシィは少年をようやく説得できた安堵から大きく息を吐きだし一仕事終えたような顔つきになった直後、顔面が青ざめているチェスカに服の裾を引っ張られていた。
 
「ル、ル、ル、ルーシィ……」

「何よ?少年の説得も終わったし入口に戻るわよ」