『死ぬ』というフレーズを聞いて少女は明らかに表情が青ざめている。
 
「そ、そんな…… ど、どうしよう…… お、お願いします。なんでも致しますから弟を…… 弟を助けてください」

 突然土下座を始めた姉に私は驚いてしまった。人通りもある場所で『なんでもしますから』なんてフレーズに加えて土下座するなんて傍から見たら私が脅しているみたいじゃないのよ!
 
「ちょ、ちょっと顔を上げてくださるかしら? 今あなたに出来る事はこれ以上被害を拡大させない様にすぐに家に帰って弟君の無事を祈る事。あと、おばあ様にはこの事は言ってはダメよ?ショックで余計に寿命が縮んでしまうかもしれないわ。下手をするとそのままポックリ逝ってしまわれるかもしれないわ。そればっかりは私には責任とれないもの」

「わ、わかりました。度々ご迷惑をおかけして申し訳ございません。弟が無事に帰ってこれたら御礼をさせてください」

 御礼はいらないから私に余計な心配をかけさせないでほしいわ。と言いたいところだけど辞めておこう。
 
 彼女は頭を下げると元来た道を引き返していった。
 
「常闇の森か…… まさかこんな形で因縁の魔獣と再会することになるとはね」