合言葉は定期的に変更する必要があるのだが、考えるのが面倒になって来たのか、内容が大分雑だ。

 正しい合言葉を伝えるとドアが開き、同じ部隊に所属している部隊員が入れてくれた。

「入れ」

 扉を抜けた先に木製のテーブルを椅子が置かれており、その椅子に一人座っている人物がいる。
 
「お疲れ様、チェイン。あ、今はモリス神父だっけ。これでも飲んで一息つきなよ」

 チェインとは僕の特殊部隊でのコードネーム。部隊長がジェゴフ司祭となるので僕の上司にあたる方だ。
 
 ジェゴフ司祭様の反対側の椅子に座ると温かいお茶を出してくれた。

「お疲れ様です。ジェゴフ司祭様。ありがとうございます、頂きます。」

 お茶を飲んで一息つくと、仕事終わったムードになってしまう。
 
「さて、落ち着いたところで現状報告をしてくれるかな」

 一瞬で現実に引き戻されてしまった。あー、鬱になりそう。

「はい、ヴェルキオラ教は五歳から八歳の女児の名前、年齢、住所、本人の特徴となる容姿の情報などを記載したリストを作成していました。ただ、それが何に使用されるのかは現在の所不明です。それと……」

「それと? 言い淀むなんて君らしくないね。言いにくい内容なのか頭の中で整理しきれていないのかはわからないが、言うだけ言ってみなさい」

「は、はい。実は昨日街の視察後のことですが、ヴェルキオラ教の建設現場に戻る最中に領主の娘さんであるマルグリット嬢にお会いしたんですよ。
 ヴェルキオラ教の建設現場に来ていたので、退屈しのぎに見に来たご令嬢の気まぐれの様なものだと思っていたんです。
 でもそうじゃなかった。()()は化け物ですよ。六歳? 貴族令嬢? 冗談じゃない! 何をどうやって育てたらあんなものが出来上がるんだ!」
 
 しまった、つい荒げてしまった。僕らしくない。何を言っているんだ。
 
「落ち着きたまえ、チェイン。感情を露わにするなんて君らしくないな。一旦深呼吸したまえ」

 そうだ。一旦、落ち着こう。僕は司祭様の言うとおりに大きく深呼吸した。

「すみません。もう大丈夫です」

「君は彼女の事を化け物と呼んだが、本当にそうかな? 例えば、シェリーと彼女が戦ったらどちらが強いかな?」

 ――シェリー