魔力制御(コントロール)力が異常に高い。もはやベテランの域と言ってもいいかもしれない。
 
 だが、それに比べて魔力量がそこまで高いというわけでもない。もちろん年齢から鑑みれば異常と言っても差支えない量ではある。
 
 まるで元々魔力量は大したことないけど、魔力制御(コントロール)訓練の過程でなんとかここまで増やした様に見受けられる。
 
 そう仮定した場合、年齢がおかしい。
 
 六歳って話じゃないか。生まれたその日から訓練開始しましたとかでもない限り、有り得ない状況なんだよね。
 
 ここに来る前に領主一家について事前に調査済みだ。
 
 父親は領主のサミュエル・グラヴェロット。若い頃は冒険者活動も行っていたそうだが、魔法に秀でた人間ではない。
 
 母親のアニエス・グラヴェロット。元は男爵家の箱入り娘でこれぞ貴族令嬢な生活を送っていたため、魔法とは無縁の生活を送っていた。
 
 この調査に間違いはなかったはず。であれば娘は何をしてこうなった?
 
 魔法専門の家庭教師? いや、そんな情報はなかったはずだ。
 
 となると、なんだ? 一番考えたくないんだけど、まさかの独学か?
 
 なんだそりゃ、馬鹿馬鹿しくて笑えてくるよ。でも、他に理由が考えられない。
 
 そして、もしそれが本当だとしたら…… 何が貴族令嬢だ、とんだ化け物じゃないか。
 
 もう一人の少女…… メイドだったか。あの子は()()()()で異常なんだよなあ。

 はぁ~、僕はもっと平和に生きたいんだよ。異常者とか化け物とか呼んで差支えない連中とはあまり関わり合いたくないんだ。
 
 なのに嫌でも関わってしまうというか引き合ってしまうというか、僕はそんなついてない星の下に生まれたんだろう。
 
 なんで僕の周りはそういう連中ばっかりなんだよ。
 
 異動願い出そうかな。受理されなさそうだけど……。
 
 定時報告に行くのが鬱になるなあ。いやだなあ。でもいかないとなあ。
 
 僕は半ば嫌々諦めモードで報告場所である聖王教会から少し離れた場所にある灯りの消えている古民家のドアを指定回数、指定された間隔で叩く。
 
「昨日の夕飯は?」

「三軒隣のおばさんがくれたクリームパスタ」