「ねえ、ナナ。喉に小骨が刺さった時、あなたならどうする?」

「なんですか? 急に…… うーん、そうですね。喉に手を入れてみたり、ちょっと汚い表現ですが、えずいてみたり…… あとは水を飲むとかですかねぇ」

 ナナがえずいている所を目撃しちゃったら優しく背中をさすってやりたい。
 
 って違う違う! これじゃ、ただの変態みたいじゃない。
 
「それでも小骨が取れなかったらどう思うかしら?」

「うーん、イライラするかもしれませんね」

「そう言う事よ」

「今日の朝食に魚はなかったはずですが?」

 そんなしょうもない会話をしていると通りすがりの二人組の男性に声を掛けられた。
 
「突然のお声がけ失礼します。グラヴェロット子爵のご令嬢マルグリット様とお見受けいたしますがお間違えないでしょうか?」

 ただの通行人かと思いきや、白い装束がベースにはなっているもののデザインは異なっており、その上から豪華な刺繍の入ったマントを羽織った出で立ちはどう見ても高位の僧侶である。
 
 なんで、こんな人が私に用があるんだ? 少々気になったので会話をしてみることにした。

「はい、私がマルグリット・グラヴェロットです。失礼ですが、どこかでお会いしましたでしょうか?」
 
「わたくし、今回建設されるヴェルキオラ教ガルガダ支部で司祭を務めさせていただくサディアスと申します。マルグリット様とはお話しさせていただくのは今回が初めてです。教会建設依頼の件で一度領主様にお伺いしたことがありまして、その際にお庭で本を読まれていたマルグリット様をお見かけしたのです」

 なるほど、筋は通ってるわね。このマルグリットさんの魅力に気づいちゃったか?
 
 また、その彼の後ろにはお供の神父らしき人が控えているが、目を大きく見開き、口をぽっかり開けて、小刻みに震えながら私の事を見つめる姿はまるで魔獣にでも遭遇した小鹿の様である。
 
 私の視線に気づいたサディアス司祭は続けて彼の紹介をしてくれた。
 
「こちらは私の補佐を務めているモリス神父です。モリス神父、ご挨拶なさい」

 小鹿もといモリス神父は胸に手を当てて息を整えると、口を開きだした