だって正直こんな奴とガチでぶつかり合ってたら私の身が持たないんだもん。いつもだったらもうすぐ魔力充填が完了するからそれまでの辛抱だ。
 
 そう思っていた矢先、オークは私が間合いに入らないとわかったのか標的をチェスカに変更した。
 
 ヤバイと思った焦った私は間合いとか頭になく、ターゲットを私にを向けさせるために、私の剣が届く位置まで飛び込んでいた。
 
 その直後、オークはこちらに突如振り返り、すでにこん棒を振り上げていた。
 
 罠だったのだ。私を間合いにおびき寄せる為……。オークってこんな頭が良かったのかと感心するべきなのか、私の頭はオーク以下なのかと絶望する間もなく、こん棒は既に振り上げられていたのだ。
 
 本能的に『死んだ』と思った私は全身から血の気が引いていくのを感じていた。そのせいなのか、足が震えだし、軸足のバランスを崩して倒れてしまった。
 
 倒れたと同時に目の前で大きな鈍い音がなったのを聞き逃さなかった。
 
 音の方を見てみると、私の足のつま先数センチ程の位置にこん棒が振り下ろされており、地面が抉れていた。
 
 私は息をすることを忘れて、抉れた地面を眺めていた。
 
 もし、この位置に自分がいたら…… そう考えたら呼吸をすることをその瞬間忘れていた。

「準備出来た!」

 チェスカの声で我を取り戻した私は巻き添えを食らわない様にチェスカが魔法を使う直前に死にかけた昆虫が如く四つん這いのまま範囲から急いで離脱した。

爆炎下級魔法(フレイムバースト)

 チェスカの得意にして現在使える最大の威力を誇る爆炎系の魔法。下級とは言え、Eランクの魔獣なら数体をまとめて燃やし尽くす威力がある。
 
 これならさすがのオークも…… と思っていたのに爆発によって発生した煙の中から出てきたのは表面上に火傷のが跡がいくつか見られるものの、ほとんどダメージを負っていないであろうオークの姿だった。
 
 噓でしょ……? EからDになっただけでこんなに違うものなの? FからEに上がった時はそうでもなかったじゃん……。
 
 オークが標的を完全にチェスカに変更したみたいだ。
 
 マズイマズイマズイ。私は震えている足を叩いて、無理やり立ち上がった。
 
「させるかあああああああ」