Dに上がって調子に乗ってCランク魔獣に挑んだら死にかけた経験がある……。だから私にとってCランクとは実は大きな壁でもあるわけ。
 
「そうなんですね。でも命さえあればいくらでも挑むことは出来ますから無理はしないようにしてくださいね」

「ええ、そうするわ。それにしてもマルミーヌちゃんはすごい強かったけど、どうやってあんなに強くなったの?」

「私の父が元冒険者で物心ついたときから手ほどきを受けましたので……」

 半分本当で半分嘘。嘘をつくのは忍びないけど、これも正体を隠すためです。すみません……。

「すごいお父様なのね。お名前を聞いてみたいところだけど、マルミーヌちゃんの事情を考えてやめておくわね」

 やはりルーシィさんの様な出来る女性は違う。『察する』能力が半端じゃない。チェスカさんもこの辺りは見習うべき。危うく酒の肴にされるところだったし……。
 
 万が一、そのチェスカさんの耳に『父親は領主』なんて入った日には、翌日にはお母さまの耳にまで入ってるかもしれない。マジで注意しないと。
 
「そういえば、先ほど話の上がったエミリアさんとは何方かお聞きしても大丈夫ですか?」

「ええ、エミリアさんはギルドの受付嬢よ。あなたも二年後に登録するのであればお世話になると思うから今から知っておいても損はないわ。それに元冒険者上がりと聞いてるからもしかしたらアドバイスとかも貰えるかもしれないわ。正確なランクは知らないけど高ランクとか噂で聞いたわ」

 それはとてもいい情報だ。少しでも強くなるために色んな強者から話を聞くだけでも勉強にはなる。

「だけど、ギルドマスターの方がもっと強いらしいわよ。実際に戦ったところを見たわけじゃないけど、何度か姿は見たことがあるの。正直に言うと蛇に睨まれた蛙と言ったところかしら。あの眼力で睨まれたら全身すくんじゃうわ。だから姿を見ても目を合わせないようにしてるの」
 
 それ書籍で言うところの街中ではパンピーにイキってるドチンピラが歴戦の猛者が現れた瞬間に壁際に立って背景と同化するというケースと同じ感じかしら。まあ、下手に目を合わせて因縁つけられたくないものよね。
 
 でもそれだけ強いってすっごい気になる。早く八歳にならないかしら。それまでにどれだけ強くなれるかわからないけど、一度お手合わせしたいものだわ。