殿下がお供二人に指示を出すと、勢いよくこちらに向かってきた。フィルミーヌ様を押さえつけるつもりか? 私が黙ってそんなことさせると思うか? 私はフィルミーヌ様とお供の間に割り込み、イザベルに指示を飛ばす。
 
「イザベル! フィルミーヌ様をお守りして!」
 
「!!!」
 
 イザベルがフィルミーヌ様の前に立ったのを確認して、私はお供二人と対峙する。先に迫ってきたのはお供その一、ディアマンテ。剣聖の弟子。
 
「フィルミーヌ様に手を出すことの意味をご理解した上での行動ですか?」
 
 少々腹が立っている私はディアマンテに彼以上の殺気をぶつけて威圧する。
 
「くっ、王家を敵に回すつもりか?」
 
「何言ってるんですか? 真偽も確かめずに殿下独断による一方的な断罪で公爵家のご令嬢と婚約破棄など”王家”が認めませんよ。とはいえ、多数のご子息、ご令嬢がいる場での発言ともなると醜聞も避けられないでしょう。恐らくあなたたちの望みどおりに婚約破棄の流れになるとは思いますが、少なくとも王家から公爵家に対して謝罪及び賠償は避けられないでしょうね」
 
 まるぐりっとのことばによるはかいこうせん
 
 きゅうしょに あたった! こうかは ばつぐんだ!
 
 ディアマンテがたじろぐ中、殿下のお供その二であるロイスが割り込んで来た。
 
「チッ、ディアマンテの馬鹿が! 番犬の戯言にいちいち反応しやがって。」

「あらあら、あなたもディアマンテ君も四カ月前に私に一度ボコボコにされた事をもう忘れたのですか? 木剣で頭叩き過ぎたかしら?」

「貴様! イチイチ過去の話を引っ張り出しやがって。四カ月前とは違うという事を今ここで教えてやる」

 ロイスって確か勇者の弟子って話だっけ? あまりこの二人の事詳しく知らないのよね。実は四カ月前に二人共、王国武術大会に参加した際にボコボコにしたんだけど、それ以外にあまり接点がなかったから。
 
 ちなみに私は二人をボコった後にメデリック公爵家騎士団長ジェラール様にボコられたけどね。うん、いい思い出だったわ。
 
 そもそも勇者ってなんだろう? 『勇気ある者』って聞いたことあるけど、それって職業なの? 剣聖以上に意味不明なんだけど…… 称号なの? 兎にも角にもフィルミーヌ様の邪魔をするなら私の敵だ!
 
『魔力展開』