キュートアグレッションとか言葉を最初聞いたとき意味不明とか思ってたけど、今なら…… 少し…… 気持ち…… 分かります……。ガブガブ噛み噛みしたくなっちゃう気持ちわかるでしょう? え?わからない? わかる人だけわかってりゃいいんですよ!
二人目がイザベル・コンパネーズ伯爵令嬢。
無口なので声聞いたことあったっけ? というほど。その代わりボデイーランゲージはすごい激しい。そこまでするなら喋ったらいいのにって思う。見ていて飽きない不思議令嬢。
そんな彼女は赤髪ポニーテールで引き締まったスタイルを持ち、絶対スポーツやってたでしょ?というくらい見事な体型。でも本人は首を横に振るもんだからスポーツはやってないっぽい。三年間ほとんど一緒にいたわけだから本当は知ってるんですけどね。
そして……お待たせしました。三人目が私マルグリット・グラヴェロット子爵令嬢でございます。え?待ってないって?とりあえず聞いてくださいよ。
黒髪ショートボブな私はいつも十代前半と見間違えられるほどの少女体型……。
昔の私は体が弱く、気が小さく、人見知りと言ったネガティブ三種の神器持ちだったんですが、フィルミーヌ様、イザベルと出会って取り巻きにしてもらったおかげで三年間ボッチにならずに済みました。
人見知りも大分改善されて、フィルミーヌ様にちょっかいを出す輩に脅…… ゲフンゲフン。お断りさせていただいております。おかげさまでついた渾名が公爵令嬢の番犬だの狂犬だの意思疎通の取れる魔獣だの…… いや、これもう悪口じゃん!
性格が三年間で一番変わった人物ランキングがあったら私は間違いなく一位なんじゃないでしょうか?
体の弱さも学園に入ってから冒険者ギルドの皆様方とたまに遊びに行くメデリック公爵家騎士団の方々にイジ…… もとい鍛えて頂き、今ではDランク冒険者認定された剣技と魔力になったんです。ん?ランクの基準がわからないですか?まあ、追々説明しますよ。
私も一旦落ち着くために婚約破棄を言い渡された愛しのラブリースイートであるフィルミーヌ様のご尊顔でも拝謁しようとしたところ、本人も動揺しており第二王子殿下の発言が頭で理解しきれていないようで”もう一度言ってくんない?”とでも言いたげな表情だ。落ち着くために一息つき、口を開く。
「殿下、理由をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
「理由だと……? 貴様、あれだけのことをしておいてしらばっくれるというつもりか?」
「申し訳ありませんが、身に覚えがありません。」
「そうか…… 貴様がクララ・コンテスティ男爵令嬢に対して行った悪逆非道の数々に覚えがないとは…… 彼女の鞄を噴水に投げ入れ、窓の外から彼女の頭上に向けて鉢植えを落としたそうだな。他にも階段から突き落とし、食事に毒を盛った。それでも足りないのか暗殺者を差し向けたそうだな。まあ、暗殺者どもは私たちが捕まえた上で奴らの口から首謀者であるフィルミーヌの名前を吐かせたのだ。これ以上の言い訳もできまい」
おいおいおい、本当にそんなことしてたらまず人としてどうかと思うよ。ていうか婚約破棄云々の前に完全に犯罪者じゃーん。
「わたくしはその様な事は行っておりません!」
「ここには貴様の非道な行いを見ていたという者が多数いるのだ! まだ白を切るというつもりか! 」
いやいや、どう聞いても捏造しかありませんけど? ずっと傍にいた私が言うんだから間違いない……。やってない証拠出せなんて言われても困るし、悪魔の証明じゃないんだからさ。むしろ主張するそっちが証拠だしなさいよ! って言いたいけど王族であることを理由に拒否られるだけなんだろうけど、権力がほぼ皆無の下っ端ってのも楽ではないですね。
それに見ていたならその場で言うべきでしょ。ここまで引っ張る方も相当に問題では?
Q:なんでこんな当たり前の事に誰も突っ込み入れないのか?
A:わたしたちは敵視されてるから。
それにしても気になるのが三点ほど。
一点目がフィルミーヌ様に対する殿下の態度。一年生の夏ごろまでは婚約者であるフィルミーヌ様と仲が良かったはずなんだよね。夏の長期休暇を境にフェードアウトして気が付いたらクララ嬢を侍らしてるんだもん。
二点目はクララ嬢の態度。その生まれたての小鹿ちゃん的な態度…… ”私はこんな事になるなんて思わなかったんです”とでも言いたげな表情だが、殿下は婚約破棄するなどと言わなかったんだろうか? でもこうなってしまった以上あなたにも責任があるのですよ? あとでねっとり話し合いの場を設けないといけないみたいですね。ククク……。
三点目、仮にお嬢様が気に入らないにしても何でここまで憎悪の目を向けられてるんだ。いや、憎悪というよりも殺意か。特に殺意むき出しなのが殿下とお供四人なんだよね。そこまで殺したくなるくらい何かがあったとはとても思えない。理由は分からないけど今はフィルミーヌ様をお守りしなければ。
このままじゃ埒があかないので私が殿下とフィルミーヌ様の間に割り込んでみるか。
「お待ちください、殿下。 フィルミーヌ様の仰る通り、わたくし達には身に覚えのない話に御座います。一度情報の出所と信憑性の再確認、当日のわたくしたちの行動と照らし合わせての再精査をお願いしたく存じます。」
「貴様の言う事が最も信用ならんぞ! 番犬が!」
あれー? これもう聞く耳もたないってやつですね。私は情報の再整理をしろって言ってんのに言い訳してるわけじゃないんだから信用も何もないでしょーが。しかも最も信用できないって…… 結構傷つくぞ。
「それともうひとつ。 クララ嬢の為の断罪という事は理解いたしましたが、クララ嬢の肩を抱いていい理由にはならないと思われます。それとも、その様なご関係であると考えても差支えないのでしょうか?」
「ふん、目ざとい犬め。 だが、まあいい。 教えてやろう、貴様の言うとりフィルミーヌとの婚約破棄後、クララ嬢と婚約する」
クララ嬢が下を向いていたと思ったら、殿下の発言によりあまりに驚いた表情をして殿下の方を向けている。まさかとは思ったけど殿下の単独とは……。 小鹿ちゃんが”聞いてないよー”って表情してるんだけども?
小鹿ちゃんに公務がこなせるとも思えないし、王妃教育どうするつもりなの? これはヤバい未来しか見えないんですけど。この国の未来は大丈夫かな……。
「いつまでも認めないつもりか! 無理矢理にでも認めさせてやる! 行け!」
「「はっ!」」
やせいの殿下のお供その一、その二があらわれた。
殿下がお供二人に指示を出すと、勢いよくこちらに向かってきた。フィルミーヌ様を押さえつけるつもりか? 私が黙ってそんなことさせると思うか? 私はフィルミーヌ様とお供の間に割り込み、イザベルに指示を飛ばす。
「イザベル! フィルミーヌ様をお守りして!」
「!!!」
イザベルがフィルミーヌ様の前に立ったのを確認して、私はお供二人と対峙する。先に迫ってきたのはお供その一、ディアマンテ。剣聖の弟子。
「フィルミーヌ様に手を出すことの意味をご理解した上での行動ですか?」
少々腹が立っている私はディアマンテに彼以上の殺気をぶつけて威圧する。
「くっ、王家を敵に回すつもりか?」
「何言ってるんですか? 真偽も確かめずに殿下独断による一方的な断罪で公爵家のご令嬢と婚約破棄など”王家”が認めませんよ。とはいえ、多数のご子息、ご令嬢がいる場での発言ともなると醜聞も避けられないでしょう。恐らくあなたたちの望みどおりに婚約破棄の流れになるとは思いますが、少なくとも王家から公爵家に対して謝罪及び賠償は避けられないでしょうね」
まるぐりっとのことばによるはかいこうせん
きゅうしょに あたった! こうかは ばつぐんだ!
ディアマンテがたじろぐ中、殿下のお供その二であるロイスが割り込んで来た。
「チッ、ディアマンテの馬鹿が! 番犬の戯言にいちいち反応しやがって。」
「あらあら、あなたもディアマンテ君も四カ月前に私に一度ボコボコにされた事をもう忘れたのですか? 木剣で頭叩き過ぎたかしら?」
「貴様! イチイチ過去の話を引っ張り出しやがって。四カ月前とは違うという事を今ここで教えてやる」
ロイスって確か勇者の弟子って話だっけ? あまりこの二人の事詳しく知らないのよね。実は四カ月前に二人共、王国武術大会に参加した際にボコボコにしたんだけど、それ以外にあまり接点がなかったから。
ちなみに私は二人をボコった後にメデリック公爵家騎士団長ジェラール様にボコられたけどね。うん、いい思い出だったわ。
そもそも勇者ってなんだろう? 『勇気ある者』って聞いたことあるけど、それって職業なの? 剣聖以上に意味不明なんだけど…… 称号なの? 兎にも角にもフィルミーヌ様の邪魔をするなら私の敵だ!
『魔力展開』
魔法を扱う上で基礎でもあり最も重要とされる魔力の制御。その魔力を体に流れる血液の様に全身に魔力を流すことで身体能力が強化されるんだけど、私はこれを『魔力展開』と呼んでいる。ここで間違ってはいけないのが全身に流す魔力量。体が一度に受け付けられる魔力量には許容範囲があり、それ以上を流し込むと体に支障をきたしてしまう。少量の許容範囲オーバーであれば筋肉痛程度で済むけど、大量の許容範囲オーバーを行うと最悪なケースは全身が爆散することもあるらしい……。これを鍛えるには主に二パターンあり、一つ目は身体能力を上げること。二つ目は常に魔力を体に展開し続けて慣らすこと。
私はこれを覚えてから約三年間毎日続けてきたのだ。魔力の制御において学園で私の右に出るものはいない。
ロイスは帯剣していた木刀を右手に持ち、袈裟斬りしてきたところを私は華麗に躱して空いた脇腹に拳を叩き込み、ロイスが下がったところに蹴りを入れるが木刀で防がれてしまった。しかし、拳のダメージがあるのか脇腹を抑えている。
てきの ろいすは たおれた…ようなもの!
「まったく、二人共だらしないね」
大物ぶって階段からゆっくり降りてきたのはジェイ。賢者の弟子という仰々しい肩書を名乗っているが要するに宮廷魔導士長の弟子ってだけ。
「物理では犬に一歩遅れを取っているようだが、魔法ではどうかな? 君はたしか攻撃魔法が苦手だったはずだ」
お察しの通り、私は攻撃魔法、回復魔法が苦手なのだ。とはいえ使えないわけではない。ただ、そっちに魔力を使うくらいなら物理を補う方に使った方が効率がいいだけなのだ。
そして、魔法全般はイザベラの得意分野だったりする。私たちはそれぞれ、武のマルグリット、魔のイザベラで学園のツートップを誇っている。麗しの公爵令嬢フィルミーヌ様の取り巻きたるもの当然です。
「躾の時間だよ、番犬。さあ、食らうといい」
私が普段、誰を模擬魔法戦の相手にしてると思ってるの? あなたの目の上のたん瘤であるイザベラだよ? ジェイはイザベラに比べて魔力の練りが甘い。だから魔法の発動まで時間がかかる。私ならジェイの魔法発動前に接近して捕まえられる。案の定、簡単に接近した私は左手で杖を抑えて右手でジェイの顔面を捉えた。
「はい、捕まえた」
私はジェイの顔面を右手で掴むと高く持ち上げて右手に力を込める。
「あががががががががっ」
「マルグリット! おやめなさい!」
フィルミーヌ様の一喝によりパブロフの犬が如く動きを止めてしまう。どうやら私の体はフィルミーヌ様に叱咤されることを喜びとしているかもしれない……。
私は掴んでいたジェイを投げ飛ばした。尻餅をついたジェイは忌々し気にこちらを見ている。
「殿下の仰りたいこと、理解いたしました。誤解も多々ありますが、婚約破棄については前向きに検討させていただきます。今は感情だけで話をしても解決しないかと思いますので、一旦実家に戻り、改めて本件に関する釈明の場を設けさせてください。」
「フン! まあ、いいだろう。さっさと行け!」
フンフン煩いんだよ、アンタ! 鼻息荒立てないと会話もできんのか!
「失礼いたしますわ。イザベラ、マルグリット、行きましょう」
「はい、フィルミーヌ様」
「!!!」
「あぁ、一つ言い忘れていたがな……」
この王子、いちいち言い方が癇に障るんだよね。
「貴様らの両親に頼ろうとしても無駄だぞ? メデリック公爵、コンパネーズ伯爵、グラヴェロット子爵にも話は既に通っており家に帰ることは許されないだったな。」
「「「???」」」
脳みそが今の発言を理解しきれていないのだけど、言葉通りに解釈するのであれば私たちの両親は殿下側についているってこと? 私たちを追い出すことに賛成しているってこと? 正直に言って信じられない。娘の私が言うのもなんだけど、めちゃくちゃ娘を溺愛する親バカなのだ。次期当主である兄も迷惑なほどのシスコンだと知っている。
当時体の弱かった私は社交界などほとんど経験していなかったのだが、両親が少しくらいは経験した方が…… ということで、お兄様と一緒に侯爵家のお茶会に参加したことがある。そこでクソガ…もといそこの三男坊に目をつけられてしまい、私の容姿にケチをつけてきたのだがそれを見たお兄様が… ってこんな状況で昔語りしてる場合じゃない!
それにメデリック公爵家にしても同じくらい溺愛されているのは私たちも遊びに行った時に目の当たりにしている。殿下の言う事は嘘の可能性が高いけど万が一、万が一にでも殿下の言うとりの状況を見てしまったらきっと私は立ち直れない……。 ということもあるから慎重に考えないと……。
「貴様らの行き先は国外しかない」
なんで嬉しそうなの、コイツ。あー、ぶん殴りたい。その鼻っ面にぐーを叩き込んで差し上げたい。これでもかというほどぶち込んだ後に階段落下型スープレックス決めてガッツポーズを取りたい衝動に駆られる。
「マルグリット、おやめなさい。『え?なんで心が読んでるんですか?』みたいな顔してもダメよ? フフッ、あなた、わかりやすいもの。真偽の程はわからないけど、一旦、隣国に身を寄せてからそれぞれの家に手紙を出して状況を確認してみましょう。それでいいかしら?」
フィルミーヌ様は私たちだけに聞こえるような小さな声で語りかけてくるんだけど、そのぷるるんとした唇を吐息がかかるほど私の耳に近づけて頂いても私は一向に構わないというか、むしろお願いしますというか!!
「そうですね。隣国と言えば魔導王国パラスゼクル。せっかくなので新しい魔道具のウィンドウショッピングでもしましょう。」
「観光に行くのではないのだけれど……。」
私たちは味方がいない失意のどん底の中……。
隣国への観光に胸を膨らませていた!!
私たちは馬車に乗り隣国を目指していた。王都から七日程かかる距離でそろそろ道程の半分に差し掛かるころ。
やることもなくて窓の外を眺めていた。
「天気は悪く雨が降っており、まるで私たちの心模様を表しているようだった。」
「マルグリット? あなた、突然何を言い出してるの?」
はっ、つい心の声が!
フィルミーヌ様は綺麗な姿勢のまま、ジト目でこちらを見つめてくるが、これはこれでご褒美だと思っている。
「あなた、本当にこの三年間で性格がガラッと変わったわよね。初めて会った時は周りがたてる音にすぐ反応してビクビクする子犬みたいだったのにね」
「!!!」
言い方の違いはあれども、やっぱり私の犬扱いは変わらないんだ……。
イザベラは何かを思い出したかのように口元をにんまりさせながら首を縦に振っている。出会った当初の私を思い出しているのだろうか。そんなにニンマリする程に何を思い出しているんだ? 君は!
フィルミーヌ様は口を押えながら思い出し笑いをしている。可愛すぎか、やっぱりあの王子にこの人は勿体なさすぎる。
まあ、学園に入る前の性格を思い出したら自分でもびっくりするくらい今と性格が百八十度変わっているという自覚はありますがね。
そう、きっかけとなったのは一年生の頃……
「ぽわんぽわんぽわん」
「マルグリット?」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
これは私がフィルミーヌ様、イザベラと行動を共にするようになった直後辺りの話。
「あれ、今何時だっけ?」
昔から体が弱く、外にあまり出ない私は本の虫だったので実家にいた時からお父様の書斎から本を引っ張り出しては読み耽っていた。
それは学園に入ってからもあまり変わっておらず、暇を見つけては図書室に籠って本を読んでいた。
あまり周りに馴染めなくて不憫に思ってくれたのか、最近仲良くして頂いているフィルミーヌ様からお茶に誘われていたので、時間まで本でも読んでいたところ読みすぎてしまったのか時間がギリギリになってしまっていた。
「じ、時間!時間ががが! お、お、お、遅れちゃったら、ど、ど、ど、どうしよう!! と、とにかく急がないと!」
私は慌てて図書館を出る。学園のルール上走ってはいけないと言われていることは知っているが、フィルミーヌ様を待たせてしまう方が大問題だと思っていたので人目につかないところは体力の続く限り走る。教師を見かけたら早歩きでごまかす。そうして待ち合わせ場所付近に差し掛かったところ男女の声が聞こえてきた。
「そう言わずに、上級貴族同士の交流は必要ではありませんか?」
「学園にいる間は上級も下級も貴族も平民も関係ありません。わたくしは、先約がありますとお伝えしたはずです。」
この声はフィルミーヌ様? よかった、間に合ったんだ。でも声にちょっと落ち着きがない。どうしたんだろう?
「あなたにいつも付きまとっている伯爵家と子爵家の令嬢ですよね。であれば、侯爵家である私の方を優先するべきかと」
「わたくしの大切な友人に対して、そのような失礼な物言いはやめて頂けませんか? わたくしが彼女らをお誘いしてたのです。わたくしにとっては最優先事項といってもいい大切な時間なのです。ご理解いただけませんか?」
フィルミーヌ様の後ろに立っていたイザベラさんもすごい形相で男の人を睨んでる。こ、怖いからできればその顔をやめてほしいです。
正直まだ人と会話も難しいのに、会話の最中に割って入るのが本当に無理なんだけど、フィルミーヌ様がすごい嫌そうというか困っているみたいだからなんとか勇気を出さないと。
「あ、あの…… フィルミーヌ様?」
「あら、マルグリットさん。お待たせしてごめんなさいね。すぐお茶の準備にしますね。ではサイモン様、失礼いたします。」
割り込んできた私の声に不快感を示したサイモン?という人が私を睨みつけてくる。
「ん?なんだ、君は?ここは子供の来る場所ではないぞ。」
ひえええええ、すごい睨まれてる。わ、わたしはちょっと発育が遅めかもしれないけど、これでも十六歳なんですって言いたいけど顔が怖くて言葉が出ない。ていうか制服着てるんだからわかってくださーい。
「マルグリットさんはれっきとした私たちと同じ十六歳ですよ。見た目だけで女性を判断しようなど失礼ですよ。謝ってください」
フィルミーヌ様が困ってらっしゃるし、怒ってらっしゃる。わ、わ、わ、わたしのせいだー。どどどどどどうしよう。