顔面に青筋立てて本気の淑女教育が開始されてしまうでしょうね。身体が実は弱くなかったという虚偽についても問い詰められそう。
 
 そして私の苦手なお茶会だの連れまわした挙句、成人前にマジのガチで社交界でデビューさせられてしまうかもしれない。
 
 私だって貴族令嬢だから嫌でもそれをいつかはやらなきゃいけないことはわかってるの。でもそれは今じゃない。フィルミーヌ様とイザベラを今度こそ守りきるまでは……
 
 それまでは本気で勘弁してほしい。あの空気って本当に苦手なの…… あそこに参加している人たちって何が楽しくてキャッキャウフフしてるのかしら?
 
 当時の私は身体が弱いだけじゃなくて引っ込み思案で人見知りが激しかったから、それを見かねたお母さまが他人との接し方を覚えさせるためにお兄さまと一緒にお茶会への強制参加させられたことがあったけど、あの周りの品定めしてやろうという目線がもうダメ。見られてるだけでも苦痛なのにあれはないわ。しかもよくわからない絡まれ方されたし、二度と行くまいと誓ったんだったわ。
 
 ハッ、いけないいけない。どんどん脱線して来てる。
 
 名前よ! 名前をどうするのか考えないと。兎に角、マルグリットのままじゃダメ。
 
 一旦仮の名前にしましょう。偽名ってやつね。なんかカッコいいわ。
 
 『マル』まで発言しちゃったからマルなんたらにしないとダメね。
 
 まる…… マル…… MARU…… 
 
 うーん、思いつかないいいいいいいいいい。
 
 私に良い知恵を! 助けて、イザベラ、フィルミーヌ様
 
 マルグリット……
 
 イザベラ……
 
 フィルミーヌ……
 
 ハッ! その時、私に神が舞い降りた。
 
「……ミーヌ」

「え?」

「ごめん、なんか聞き取れなかったんだけど」

「マルミーヌです……」

 二人ともポカーンと口を開いていらっしゃる。わかる、わかります。言いたいことはわかります。

 ごめんなさい、フィルミーヌ様。自分で言うのもなんですが、めちゃくちゃダッサ。
 
 何このセンスの欠片もない名前。少しでもフィルミーヌ様にあやかりたいなぁなんて欲を出した罰だわ。
 
 穴があったらはいりたーい。書籍とかだと主人公とライバルが合体したら強くなるとかあるでしょう?