もちろん思い入れはあるので、ぶちのめすには些か抵抗もありますが、人命が掛かっているので仕方ないわね。
 
 私が学生時代にDランク冒険者だったからオークをソロで倒せる力量は既にあった。ただし、一度に複数となると結構キツイ感じ。
 
 今の私はどのくらいの力で倒せるんだろうか。かなり興味がある。
 
 私は一気に駆け抜けて、彼女らとオークの間に割り込んだ。
 
「ご無事ですか?」

「神が遣わしたもう天使降臨? 違った、幼女だった」
 
「お礼にハグしたい…… そうじゃなくて、なんで子供がこんなところに?」

 オークに殺されかけたり、突然の見知らぬ人物による介入があったらもっと錯乱してもおかしくないはずなのだけど
 
 思ったより余裕あるわね、この人たち……
 
「立てそうですか?」

「腰が抜けてるからもう少し待って」

「危ない、後ろ!」

 私が二人に話しかけている最中は身体を二人の方に向けていたため、当然オークから見たら背中を向けている。
 
 オークはチャンスと思っているのか、こん棒の様な物体を振り上げている。
 
 なんのデジャヴかしら、似たような襲われ方を半年ほど前にされたわね。
 
「ダメ、間に合わない」
 
 女性二人は私の回避が間に合わないと悟ったのか本能的に顔を手で覆い隠していた。

 私の方はもちろん、最初から回避するつもりは全くないの。せっかくだから実際に受け止めてみて、ダメージはあるのか? 衝撃はあるのか? 今の私は当時の私と比べてどのくらい変わってるのか? 
 
 それを確認したくて攻撃させてみたというところかしら。
 
 私はこん棒が降ってくるであろうポジションに手を広げて腕を突き出していた。振り下ろされたこん棒は私の手のひらと衝突し、お腹に響くような鈍い重低音が周辺に鳴り響いた。
 
「あら、大袈裟な音量でしたが、思ったより威力は大したことありませんのね」

 予想に反して、私の身体に衝撃と言える様なものはあまり感じられなかった。

 私は受け止めたこん棒を握るとと私の手のひらの範囲にあった箇所は抉れていた。
 
「ごめんなさい、ついつい力が入っちゃいましたわ。あなたの大事な武器の一部をおがくずにしてしまいました。許してくださるかしら」

「脳筋幼女!」

 それは褒めてるのかしら? 貶されてるのかしら?