「なんだ、お前は? 運び屋? ちげえか、運び屋は男だと聞いているからな。もしかして荷物の方か? 
 にしても随分小綺麗な恰好してやがるな。しかもかなり上玉じゃねえか。外にいたダグをやったのもお前か?」
 
 質問に質問で返さないでほしいわね。しかも質問多すぎだし…… まあ、すんなり答えるとは思っていないけど。
 
「外にいた男を仕留めたのは私よ。私がここに来た理由は貴方たちが言う運び屋から、ここの場所を聞き出したからよ。
 運び屋は衛兵に捕まったし、荷物と呼んだレディは無事に保護したわ。私は答えたのだから貴方も答えなさい」
 
 男は汚らしい表情で『ニヤッ』とすると、残りのもう一人に合図を出していた。
 
「いまだ、捕まえろ」

 私と会話をしている最中に私の真後ろに迫っていたようだけど、なんで私が気づかないと思っているのであれば大間違いよ。
 
 かつて学園で『意思疎通の取れる魔獣』と呼ばれた私が近場の人間の気配に気づかないわけないわ。
 
 私の真後ろにいた男は私を殴って気絶させるつもりか、木の棒を振り上げていたが、そんなものはお見通しである。
 
 バックステップで真後ろにいた男の股の間を搔い潜り、手の届く範囲にあった木で出来た椅子を持ち上げて男の後頭部に思いっきり叩きつけて倒した。
 
「残念ね、麗しの幼女だと思って甘く見たのが運の尽きね」

「さて、次は私の話を聞いてもらえる番よね? 答えなさい、カシラはどこ? ここには貴方たち五人しかいないの?」

「そうだ、お前がカシラの何かは知らねえが、もうここには来ねえぜ?」

「どういうこと?」

「俺たちがつけてるペンダントはな、人間の心臓の鼓動を感知してから起動する。
 起動後に一度でも心音が停止すると判断された場合はペンダントは色を変色させる。
 仲間内でつけてるやつにも異常が発生した場合は、その内容が共有されるから俺たちにも伝わる。
 それと同時に俺たちの本隊にもその連絡がいくってわけだ。だからここの仕事でしくったと本隊は判断してるはずだ。
 よってここにはもう誰も来ねえってわけさ」
 
 まさかそんな高性能な魔道具を所持していたとは…… 
 
 足がつかないようにするためとはいえ、こいつ等が十年以上もこんな仕事を続けていられた理由はこれなのかもしれない。