「そ、そんな事ないわよ。もう夜だし、部屋に戻って本を読むこと以外出来る事なんて他にないわよ」

「ムムッ、まあいいです。あまり遅くならないようにお願いしますね」

「わかったわ。明日もちゃんと起きるから」

 案外私って即興の演技が下手くそなのね…… これはマルグリットさんの弱点その三にでもなりそうだわ。
 
「一旦ベッドに潜ってみんなが寝静まるまで待とうかしら…… 寝ないように気を付けないと…… 寝ない…… ように…… ZZZzzz」



……………………
………………
…………
……


「ハッ!! ヤッバ、寝ちゃった…… なんでこういう時に限って人は寝るんだろう」

 にんげんだもの まるぐりっと。
 
「書籍のポエムを引用してる場合じゃなかったわ、急がないと!」

 さっさと着替えてっと…… ヨシッ、窓からコッソリ出るわよ。
 
 さて、ここからは一気にダッシュでガルカダの南東の森まで行くわよ。
 
『魔力展開』


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 


 さて、南東の森まで来たけど、思ったより魔力も減ってないわね。日頃の訓練の賜物というやつね。

 どの辺にいるのかしら? 森の中央付近まで行ってようかしら。
 
 中央付近を目指して走ってみるもののそれらしき建物も人の気配もなさそうだと思った矢先
 
 ん? 灯りが見えてきたわね、あそこかしら。
 
 バレないようにコッソリ近づいてみると灯りの発信源はどうやら小屋からみたい。
 
 小屋の窓をバレない角度からのぞいてみると、見た感じ量産型とも言える風貌の賊が五人いる。
 
 赤服がいない? というか人数が少ない。もしかして別動隊かしら?
 
 聞き耳を立てていたら中の声が聞こえてきた。
 
「おっせーな、運び屋の野郎」

「仕事しくじったかぁ?」

「もしくは、お愉しみすぎて時間かけてんかもしれねーな」

「いきなりキズモノにしてたらカシラにぶち殺されんぞ」

 カシラってのが赤服の事っぽいわね。

「早く来ねえと、俺らはいつまでもここにいなきゃいけねえじゃねえかよ」

 今の話を聞く限りだとこいつらは只の受け取りをするための人員って事かしら? 等と考えていたら……

「飲み過ぎたから外で小便してくるわ」

 ヤバッ、一人外に出てきちゃうじゃん。
 
『魔力展開』