~ 翌日 ~

「お嬢様~」

「……」

「お・じょう・さ・ま―――――」

「……ハッ! どうしたの?ナナ」

「さっきから話しかけてるのにずっと上の空みたいでしたので何かあったのかと思いましたぁ」

 そうだよ~、今日の夜に賊に襲撃を仕掛ける事ばかり考えてました。てへっ! なんてナナに言えるわけがない。
 
 世界のどこに五歳児が賊を襲う気満々ですなんて危険物がいるのよ。まあ、ここにいるわけですが。
 
 という作戦当日の朝っぱらから物騒な事を考えている危険物取扱者乙種もとい危険物扱い令嬢マルグリットです。
 
「お嬢様、またブツブツ言ってますよ。心の声が漏れ過ぎでは? 気を付けてくださいねぇ」

 マルグリットの弱点その二。考え事をしている最中に頭の中身が口から漏れ出す。
 
 そういえばフィルミーヌ様にも言われたなあ、ナナはすぐに察して『心の声が漏れ出てる』なんていうけど、フィルミーヌ様の場合は『マルグリット? あなた突然何を言い出してるの? 大丈夫?』なんて私の頭の心配をしてくれるとても優しい方。
 
 イザベラは口に出さなくても私の頭の中身が表情で伝わってるみたいで、すぐに訴えかけてくる超人技を披露してくる。
 
 故に今日のイベントはフィルミーヌ様とイザベラの弔い合戦でもあるわけです。いやでも気合が入ってしまいますね。
 
 よくよく考えたら、おかしな所があるのよね。前の人生では『赤狼の牙』がグラヴェロット領に現れたのは私が八歳くらいの頃だったはず。
 
 今回の件はただ表に出てないだけで実は前からグラヴェロット領にいたって事かしら?
 
 ということは、今回の被害者は一人だったからバレなかった。細かい事件を繰り返して、耳に入りにくいようにしていたのかしら?
 
 それも今日に襲撃すれば全てわかるって事よね。
 
 よーし、みんなが寝静まった頃にコッソリ抜け出して目的地の森まで一気に突っ走る。賊をボコしてまた帰ってくる。
 
 朝までに帰ってこれるかしら…… 
 
 今のうちに仮眠でも取っておこっと。
 
 
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 


「さて、ご飯も食べたしお部屋で読書の続きでもしてようかしら」

「ムッ、お嬢様。今随分な棒読みになってましたが何か企んでますか?」

 クッ、バレずにやり過ごそうと思った事を意識しすぎて逆に裏目に出るとは……