ナナが首を傾げている。クッ、まだダメそうかしら。

「そもそも五歳のお嬢様がどうやって年上の女の子を連れ出したのですか? 運ぶにも身体の弱いお嬢様にそんな力ありましたっけ?」

 さすがに魔法使っちゃいましたなんて言えるわけがないし。身体が弱い設定はそのままにしておきたいし…… どうする? どうすればナナに力が弱くても運べるか説明が……あ、そうだわ。

「マ、マットレスよ。マットレスを階段に敷いて、その上にあの子を載せて一気に滑り降りたわ。そこから近くにいた衛兵に頼んで運んでもらったのよ」

 やはり苦しいか、そんな降り方できたにしろ勢いで投げ出されたら危ない事に変わりはないから。でも、魔法の事をバラすより百倍マシだわ。

「ムムムッ、そんな危ない降り方をしたのですか? ……結果として無事だったから今回はヨシとしますぅ。でも今回だけですよ?」

 ナナが思ったより早く引き下がった……。 もしかして、少女の捜索という危険な任務を買って出た私の事を気遣ってくれたのかしら。
 
 でも、本番は明日。夜、みんなが寝静まった頃にお祭りのフィナーレを迎えるとしましょうか。
 
 待っていないさい赤服。あの時の借りを返してあげるわ。