「理由だと……? 貴様、あれだけのことをしておいてしらばっくれるというつもりか?」
 
「申し訳ありませんが、身に覚えがありません。」
 
「そうか…… 貴様がクララ・コンテスティ男爵令嬢に対して行った悪逆非道の数々に覚えがないとは…… 彼女の鞄を噴水に投げ入れ、窓の外から彼女の頭上に向けて鉢植えを落としたそうだな。他にも階段から突き落とし、食事に毒を盛った。それでも足りないのか暗殺者を差し向けたそうだな。まあ、暗殺者どもは私たちが捕まえた上で奴らの口から首謀者であるフィルミーヌの名前を吐かせたのだ。これ以上の言い訳もできまい」
 
 おいおいおい、本当にそんなことしてたらまず人としてどうかと思うよ。ていうか婚約破棄云々の前に完全に犯罪者じゃーん。
 
「わたくしはその様な事は行っておりません!」
 
「ここには貴様の非道な行いを見ていたという者が多数いるのだ! まだ白を切るというつもりか! 」
 
 いやいや、どう聞いても捏造しかありませんけど? ずっと傍にいた私が言うんだから間違いない……。やってない証拠出せなんて言われても困るし、悪魔の証明じゃないんだからさ。むしろ主張するそっちが証拠だしなさいよ! って言いたいけど王族であることを理由に拒否られるだけなんだろうけど、権力がほぼ皆無の下っ端ってのも楽ではないですね。
 それに見ていたならその場で言うべきでしょ。ここまで引っ張る方も相当に問題では? 

 Q:なんでこんな当たり前の事に誰も突っ込み入れないのか? 
 A:わたしたちは敵視されてるから。
 
 それにしても気になるのが三点ほど。
 
 一点目がフィルミーヌ様に対する殿下の態度。一年生の夏ごろまでは婚約者であるフィルミーヌ様と仲が良かったはずなんだよね。夏の長期休暇を境にフェードアウトして気が付いたらクララ嬢を侍らしてるんだもん。
 
 二点目はクララ嬢の態度。その生まれたての小鹿ちゃん的な態度…… ”私はこんな事になるなんて思わなかったんです”とでも言いたげな表情だが、殿下は婚約破棄するなどと言わなかったんだろうか? でもこうなってしまった以上あなたにも責任があるのですよ? あとでねっとり話し合いの場を設けないといけないみたいですね。ククク……。