いつまでもここに居たら追手が来るかわからない。本来なら私ごときどうでもいいのかもしれませんが、滅ぼした村の生き残りなど生かしておく道理もないでしょう。
 
 絶対に私の事を探しに来るはず。その前に逃げ切ってから、復讐する方法を考えなければならない。
 
 私は領都から遠ざかる方向に進みました。近くに居るとすぐに見つかって追手を嗾けられてしまう。
 
 領主の耳に入るまで時間を掛ける為に少なくとも遠ざかる方向に進まないといけない思って南を目指しました。
 
 途中で村に立ち寄る事も考えたりもしましたが、どこに領主の手の者がいるかわからないと考えて出来うる限り村々を避けて行動していました。
 
 直に食料も尽きて、体力も限界に近づき復讐も行えないままに死ぬのかと覚悟していた時に一軒の建物を見つけたのです。
 
 どうやら教会の様でしたが、もしかしたら領主の手の者がいるかもしれないと考えもしましたが、私自身限界ということもあって立ち寄る事にしました。
 
 もしも怪しい動きをする人がいるようであれば殺してしまえばいいとまで考えるようになりました。
 
 私は意を決して教会に入りましたが、建物内の温かい空気に触れて気が緩んでしまったのか意識を失ってしまったのです。
 
 目が覚めた時には、ベッドで寝ていました。
 
 周りを見渡してみると真っ白な壁にベッドの他には小さな机だけが置かれた質素な部屋でした。
 
 自分がここで寝ていた理由を思い出すべく頭を捻っているとドアがノックされて男性が入ってきました。
 
「ああ、よかった。目が覚められたのですね、教会の入口で倒れられてからずっと起きられなかったものですから心配だったんですよ」
 
「えっと…… 助けて頂きましてありがとうございます。すみません、倒れる直前の事をあまり覚えていなくて……」

「相当疲れていたのだと思いますよ。何しろ三日も眠っていらしたのですから」

「三日! そんなに寝ていただなんて…… ずっと歩きっぱなしでどこを彷徨っていたかもわからなくなったくらいなのですが、ここはどこなのでしょうか? 」

「ここはヴェルキオラ教の教会です。私はこの辺り…… ゲンズブール辺境領の一帯を統括する司教のアンドレイと申します」

 これが私にとって救世主であるアンドレイ様との出会いでした。