「大丈夫です、お父さん。私が行けば村の皆に迷惑を掛けずに済むから。領主様も約束してください…… 私が貴方様の妾になりますから村のみんなを助けてくださると」

 領主様は舌なめずりしながら私の身体の全身を隈なく見ると「楽しみだあ」という小声で呟いた内容を聞き逃しませんでした。
 
 この人の一挙手一投足が生理的に受け付けない。でも我慢するしかない。私がこの人を抑えられれば村の皆は助かるのだと思っておりました。

「いいだろう、お前と村の連中が私の言う事をちゃんと聞く限りは村に手出しはしないと約束しよう」

「ペトラ…… すまない」

 私はこの日を最後に村を出て領主様の別館での生活が始まりました。
 
 毎日ではないにせよ定期的に領主様は私の元に足を運ぶようになりました。私の事なんて気にしないで欲しいのにという淡い期待など抱くだけ無駄だったのでしょう。
 
 領主様は暴力に性的興奮を覚える方の様で、私に散々暴力を加えた後で興奮滾ったモノで私をベッドに押し倒すのです。
 
 どのくらいの時間が経過したのか…… 領主様の口から洩れる荒い息遣いを聞こえないフリして私はただ天井を見つめながら『明日は領主様は来ないはずだから何をして過ごそう』と他の事を考えるようにしました。
 
 今行われている目の前の地獄からせめて頭の中だけでも逃げ出したかったから。
 
 それから一カ月が経過した頃……
 
 別館で働いているメイド達が立ち話をしている内容が偶々私の耳に入りました。
 
 その内容は私にとって信じられない内容でした。
 
 いつもであれば立ち話をしているメイドを咎める事などはせずに聞かなかったフリをするのですが、今回はそういう訳にもいかずメイド達に掴みかかる形で問いただしました。
 
「領主様が私の故郷の村に多数の兵士を送ったというのは本当なのですか?」

 メイド達は「しまった」と言う表情で「い、いえ…… そんな様な話を人伝に聞いただけで本当かどうかまでは……」と言っていました。
 
 そんな…… 話が違う……。村に戻ってみんなの様子を確かめたい。
 
 だけど、私がその立ち話を聞いてメイド達に詰め寄ったのを他の人も見ていたせいか、抜け出す事を予測されてしまいその日の夜から警備がいつも以上に厳重になってすぐに屋敷を飛び出す事が出来なくなりました。