私の生まれはエシリドイラル王国の北端に位置するゲンズブール辺境伯の中でも最も北に位置する寒村なんです。

 そんな場所に位置していますから、夏は短く気温がそこまで上がる訳でもありません。

 また、冬は長いためとにかく寒い時期が多く生きるだけでも大変です。
 
 土地もやせ細っており農作物の育ちもあまりよくありません。

 他の領の事はあまり知りませんが、税は八割と生活がまともに生活する事も出来ずとても苦しい日々を過ごしておりました。

 それでも…… 家族が、村のみんなが無事に生きていけるなら耐えていけると思っていました。

 運命の日が来るまでは……
 
 今から一年半ほど前の事です。この年は不作で例年納められていた収穫量の四割程度しか出荷できませんでした。
 
 その内容に脱税を疑った領主様の監査官だけでなく領主様ご本人が自ら監査に来たのです。
 
 領主様は村に到着し、馬車を降りるなり村を一通り確認した後に村長宅で今回の収穫量について直接ご報告することになったのです。
 
「今までは毎年キッチリ既定の収穫量は問題なく納められていたはずだが、今年に限って大分少ないようだな。」

「はい、今年は例年よりも日照時間が短く思ったより作物が生育しなかったのだと思われます」

 不作による納税不足はちゃんと理由さえあれば控除して貰えるはず。理由なき納税不足は追徴される恐れがあるし、虚偽申告なら以ての外で下手すると極刑だってあり得る。

「監査官! 真偽の程はどうか?」

 監査官も領主様もクスクス含み笑いをしながらこう言うのです。

「いいえ、今年は例年通りの気候であると記録されております」

「やはりな。虚偽申告は重罪であるぞ」

 そ、そんなはずはない。だって私も今年は随分空が晴れた日は少ないと思っていたから…… 普段は今年の天気は何が多かったかなんて考えもしない村の皆も「今年は曇りが多いよねえ」とか言っていたくらいなのに。
 
 なんでそんな嘘をつくのですか? まさかお父さんを処罰するためにこんな嘘を?
 
 いや、でもそんなメリットないはず。領主様だってしっかり納税してくれた方が嬉しいはずだし、余計な諍いを起こす理由なんてないはず……。
 
 わからない。そう考えていた時に領主様が口を開いたのです。