貴方は先ほどこうも言いましたね?「あの人を支えるのは私一人でいいんです」と…… 魔力暴走を起こして使用人達から敬遠される事を予め予測していた貴方はそうすることでクララを自分に依存させる事ができる。それが貴方の望みであるならそれを叶える為にその人物の依頼を遂行した。
 
 違いますか? 答えなさい! ペトラ」

 先程まで言い訳して落ち着きのなかったペトラはやけに落ち着き始めてジッと私の事を無言で見つめている。
 
 なんか気味悪いな…… と思った次の瞬間、突如不気味に「クックック」と笑い出した。
 
 ヒエッ、私ホラーが苦手だから暗がりのしーんとした室内でそういう笑い方止めて欲しいんだけど。
 
「クックックッ…… なるほどですね。そこまでちゃんと調べられていたんですね。ほぼマルグリット様の仰る通りです…… が、一点だけ訂正させて頂くとするならゲンズブール辺境伯に関しては『私自身の意思で殺した』という事でしょうか」

 え? さすがに今の話は理解できなかった。辺境伯領の村出身とは聞いてるけど、そんな直接殺したくなる程に辺境伯に関りがあったという事かしら?
 
 ただの村人が? 全然わからない。本人に聞くしかないわね。今なら話してくれそうだし……。

「ただの村人だった貴方自身の意思で辺境伯を殺したくなる程の動機なんてあるのかしら?」

「マルグリット様はグラヴェロット家のご令嬢ですから、南端に位置するグラヴェロット領では北端に位置するゲンズブール辺境伯領の情報が中々降りてこなくて当然だと思います。だから貴方はあの領の実情を知らない。あんな男…… 死んで当然なんですよ」

 突然殺気の籠った声で過去を振り返るペトラ…… 意識的にではないでしょうに、過去を思い出して怒りが爆発したのだろうか。
 
 彼女が生まれ育った場所で一体何が起きたのか。

「話してくれるという事でいいのかしら?」

「はい、ここまでバレていては隠す理由もありませんからね…… ではお話ししましょう。あれは今から一年半ほど前の話になります」

 ペトラの過去が今明らかになる。人の過去ってちょっとドキドキするわね。