「この場に居ない人を利用した言い訳は結構。既に裏は取っています。貴方はクララのお母さまに別の方から頼まれ事があると言ってあの場を離れたそうじゃありませんか」

「どうしてそれを? というより、いつの間に奥様に接触をしたというのですか?」

「クララのお母さまと私のお母さまは学生時代の友人関係があって既に繋がりもあった。だから接触も難しくない。そしてその段階から最も容疑者に近かった貴方の事も調べさせて頂きました。当家には優秀な密偵がいますのでね。そしたら何と! 貴方はあのゲンズブール辺境伯領出身だというじゃありませんか」

「わ、私がゲンズブール辺境伯領出身である事がどう魔力暴走事件と関係すると仰るのですか?」

「確かに直接ではありませんね。ただ…… いくつか共通点がありました。その共通点に合致している人物が一人だけいます。それがペトラ…… 貴方なんですよ。
 先程も言いましたが、貴方は魔力についてはまるで理解できていない。ですが、実際あの魔道具の仕組みも知らずにあの魔道具をクララに着けた。
 あれは身に着けた者の魔力を強引に限界を超えて引き出す為の魔道具ですね。恐らくはあの前家庭教師もその事に気付いていたでしょう。だから貴方はあの家庭教師を始末した。
 しかし、ここでいくつかの疑問が残ります。魔力に関して素人の貴方が『前家庭教師が気付くかもしれないから始末しよう』という発想にはまず至らないはず。にも関わらず貴方に殺されている。
 ちなみに前家庭教師が殺される直前に貴方が彼に会いに行っていたのを目撃した人物から証言を取っているので言い逃れは出来ませんよ。
 何故魔力暴走を引き起こす必要があったのか? あの魔道具をどこから入手したのか? 何故家庭教師を殺す必要があったのか? についてですが、こう仮定すれば答えは出るんですよ。
 
 貴方は誰かにそうする様に命じられていたから…… 
 
 貴方は裏にいる人物にただ言われるがままに渡された魔道具を使ってクララの魔力暴走を引き起こして、家庭教師を殺した。
 
 そしてゲンズブール辺境伯も家庭教師と同様の傷を負っていた事から同じ人物からの依頼で同様の手口で殺した。