何故ならその刃物には血がついていないのだから。
 
 良い頃合いだと思い、私も姿を現す事にした。
 
「そこに私はいませんよ、ペトラ」
 
 私は認識阻害魔法(インビジブル)を使って窓際に突っ立っていたが、何時までも自分が寝ていたであろう場所に刃物を突き立てられるのは見ていていい気分にはならない。
 
 私の声に気付いたペトラは刃物を振り下ろしていたシーツを捲った。そこにあった膨らみは丸めた毛布だった。
 
()()()上手くいかずに残念でしたね」
 
「な、なんのお話でしょうか……?」

 最早勿体ぶる必要もない。だから私は彼女に突きつける事にした。

「とぼけなくて結構。改めて説明が必要かしら? クララの前家庭教師及びゲンズブール辺境伯殺人犯のペトラさん」

 ペトラは忌々し気に唇を嚙みながら私を睨みつけている。