それを聞いていたナナが何かを「ハッ!」と思い出したかの様に割って入って来た。
 
「横からすみません。今のメリッサさんの話を聞いて思い出したんですけど、これって前にお嬢様とお話ししたゲンズブール辺境伯が殺された件の話に似てませんか?」

 私もそれを聞いてようやく既視感の正体が分かった。魔獣の様な手口でありながら行動原理が人間のそれだと……
 
「そうね、ナナから聞いてようやく合点がいったわ。もしかしたら犯人は同一個体の可能性があるわね。もしくは同種の魔獣か…… でも聞いた事ないのよね…… 図鑑ですら見た事ないわ、そんな類の魔獣」

「もしかしたら人間の仕業かもしれませんよ?」

「それであれば納得は行くんだけど、殺害方法が爪による惨殺なんでしょ? 人間がそんな爪持ってるかしら?」

「魔獣の爪に見せかけた武器を使って人間が切り裂いたとかでしょうか?」

「いいえ、私もそれは最初に考えたのだけれども武器・防具販売店で売ってるような爪は作りが均一なのだけれど殺害現場では不規則な爪痕、傷口だったからこそ人間の仕業ではなく魔獣と判断されたみたいなの」

 ハッ、いけない。今回はあくまでクララの魔力暴走は誰が引き起こしたか容疑者を探すための調査だったはず。
 
 その中で家庭教師が犯人なんじゃないか説を考えていたけど、話が家庭教師は誰に殺されたのかという流れになってしまっている。
 
 ついついミステリーっぽくなってしまったから面白くなって進めてしまったけど、関係ない流れになってしまったから一旦流れを断ち切らないと。
 
「ごめん、ちょっと待って。今回の調査依頼はクララの魔力暴走犯人を探すための調査であって家庭教師を殺した犯人は誰かと言う話ではないの。最有力候補の家庭教師が死んでしまったという事は真相は闇の中って事かしら?」

「いえ、実はそうとも限らないかもしれないんです。周辺の聞き込みしたところ――」

 そういう事か…… クララの話を聞いた時の違和感の正体はこれだったのか……

 というか、周辺の聞き込みってメリッサはそこまで行ってたのね。道理で時間掛ったわけだ。
 
「もう一つ教えて欲しいのだけど、クララのお母さまはシロって事でいいのかしら?」

「はい、それは間違いありません。それとお嬢様から依頼された『念の為調査してほしい』件についてですが――」