実家に手紙を出してから一カ月が経過しようとしている。

 そして、私はその間もクララの家庭教師を継続している。
 
 この一カ月の成果を見る限りクララの才能は相当なもので、このまましっかり訓練を続けていけば間違いなくイザベラを上回るどころか国を代表する程の攻撃魔法の使い手になり得る。
 
 はあ…… 敵に回るであろう子の才能開花を手伝うって自ら難易度を上げちゃってどうすんのよ私は~。
 
 クララの事で頭を悩ませつつ、未だに回答が来ないメリッサの件についても考えていた。
 
 メリッサの事だからそんなに時間を掛けずに調査結果が出てくるとばかり思っていたけど、思ったより難航しているのだろうか。
 
 今日は家庭教師はお休みの日なのでのんびり朝食を取り終わり、お茶を飲みながら時間を潰していたところでナナが急ぐ様に部屋に入って来た。

「お嬢様、メリッサさん――」

 その言葉に反応して『ガタッ!』と椅子の音も気にせずに立ち上がった。
 
「ご本人が来ました」

「ええええっ、そこは返信が来ましたじゃないの?」

 と驚いたのと同時にナナの手引きによりメリッサ本人が入って来た。

「いいえ、折角の機会なので奥様よりご許可を頂き、このメリッサ参上仕りましてございます」

 何が折角なのか全くわからないけど、お母さまからの許可を貰ってるんだったら良しとしましょう。
 
「ご苦労様です、メリッサ。来て貰って早々で悪いのだけれど、お願いしていた調査結果について報告して貰えるかしら?」

 メリッサは「畏まりました」と言いつつ、ナナに視線を追いやる。これは…… ナナには席を外してほしいという事だろうか?
 
「メリッサ、構わないわ。ナナも今回の件については理解してるからそのまま話をして頂戴」

 ナナは突然自分の事を言われたので「えっ?えっ?」と慌てふためいている。

 ヘンリエッタはナナだけに聞かせない様に仕向けているメリッサに対して不満げな目付きで見ているが、メリッサはその視線に気付いたのかヘンリエッタに耳打ちをするとしかめっ面で「う、うーん」と悩みだしている。
 
 恐らくナナの耳には入れたくない様な情報もあるのだろうけど、ここまで一緒に来たのに流石に部外者扱いは可哀想でしょと思ったので聞かせる事にした。
 
「ナナ、あなたには聞かせにくい内容かもしれないけど聞いてみる?」