二人だけ? そんな馬鹿な…… だってその二人は魔力暴走の被害者なのよ。
 
 うーん、分からなくなってきた。あくまで可能性の話として被害者になりさえすれば容疑者から外れる事を計算に入れているんだとしたら二人共容疑者になってしまうのよね。
 
 ダメだ、まだ情報が少なすぎる。せめて二人の当日の動きを知る事が出来ればなあ。
 
 クララのお母さまはともかく容疑者として可能性が高そうな家庭教師の先生の居場所なんてわかるかしら?
 
「ちなみに当時の家庭教師の先生は今どこにいるかご存じだったりします?」

「いえ、あの直後にすぐ辞められしまわれて今はどこにいるかまでは聞いておりません」

 クララの表情が急に曇りだした。しまった、私の馬鹿…… もうちょい聞き方を考えればよかった。
 
 にしても先生の行方はわからないかあ…… せめてメリッサが居てくれれば調査をお願い出来るからナナ達に夕刻に迎えに来てもらってから、実家に戻ってきているようであればメリッサ宛に手紙を出して協力してもらおうかしら。
 
 おっと、この話はまた後にするとしてクララの制御訓練も並行してしっかり行わないとね。
 
「貴方は魔力抽出の練習が圧倒的に足りていないわね。門を広げるには常に魔力を使って少しずつ広げる事をお勧めするわ」

「常にですか……? それはお部屋にいる時でも魔力を使った方がいいという事でしょうか」

「端的に言うとそうなるわね。私がいない間でも魔力を使う訓練をした方がいいわ。方法は教えるから寝る時以外は常に使い続ける事よ。魔力の使い方を身体に覚え込ませるのが一番なのよ」
 
「が、がんばります!」
 
 そして私とクララの魔力制御訓練初日は夕刻まで続いた。ナナ達が迎えに来てくれて私はコンテスティ邸を後にする事にした。
 
 クララは悲しがっていたが、まだ当分の間は来るのだからと伝えたら一気に嬉しそうにしていた。
 
 私は帰りの馬車の中で考えていた。何か違和感があると……。メリッサに調査してもらえればそれも何かわかるかしら。
 
「ナナ、実家に手紙を出したいのだけれど用紙はあったりするかしら?」
 
「はい、持ってきてますぅ。何か依頼することでもありましたか?」
 
「メリッサに調査してほしい事があってお願いをしようと思ってるの」

 そんなことを言ったらナナがムスッとしている。