「大丈夫ですよ。私は冒険者登録をしてますから、すぐにギルドに向かって終わりそうな依頼を受けて、先ずは生活費をサクッと稼ぎましょう」

「あなたばかりに苦労をかけてごめんなさい。足を引っ張ってしまうわね。こういう時に何もできないなんて本当に情けない。」

 フィルミーヌ様は申し訳なさそうにしているが、とんでもない。あなたの為に働くことこそわが喜び。
 
 番犬たる私にお任せくださいと言おうか迷ったが、自ら犬呼ばわりとは負けた気がするので言わないでおこう。

「あれ、そういえば急に暗くなってきましたね。」

「そうね。今は森の中だから星の光も届かないし余計に暗く感じてしまうのかもしれないわね」

 不気味だ。嫌な予感がする。はっ、これはフラグか!

 そんなたわいもない話としょうもない考えををしていたところ、急に馬車が止まってしまった。
 
「「キャッ!」」

「!!!???」

 御者に文句のひとつでも言ってやろうと窓を開けてみたら御者台に誰もいない。
 
 どうして? 森のど真ん中で? 嫌な予感がすると思い、周りを探ってみるとやっぱりだ。人の気配はする。
 
 でも、これは…… 思ったより人数が多い…… とかいうレベルじゃない。

 木の陰から現れたのはどう見ても見た目も服装も汚らしい盗賊といえばいいのか。

 今目に見える範囲だけでも五十人はいる。気配自体はもっとある。
 
 リーダー格であろう赤い服を着た盗賊が前に出てきた。不気味にうすら笑いをうかべながら呟いた。
 
 
「荷物はいらねえから、命だけおいてけ」
 

あ! やせいの とうぞくがたくさん とびだしてきた!