「何のお話か分かりませんけど、メリッサさんからお聞きしましたよ。お嬢様が駄々を捏ねる様ならヘンリエッタさんにお願いしたら良いと」

 あー、そう言う事ね。メリッサなら気付いても可笑しくはないけど、まさかナナが気付いている様であれば私はナナに対する洞察力を改めて再評価せざるを得なかったわ。
 
 そしてナナがまだ純真無垢な少女である事に安心した。
 
「さて、起きた事だし朝食を取りながら今日からのそれぞれの動きについて確認しましょうか」

「「はいっ」」

 あまり他人がいる所でする話ではなかったため、宿屋で出してくれる朝食を部屋まで運んでもらう様にナナにお願いした。
 
 朝食が運ばれてきてからは大きくはない部屋に備え付けられたテーブルにギリギリ三人分の朝食を乗せて三人が揃った所で朝食を食べ始める。
 
「なかなかイケルわね」

「ご飯が美味しいと聞いたのでここを選んだというのが大きいですね」

 どうやら宿屋をチョイスするのに周辺の聞き込みをしていたらしい。
 
 ナナってこんなに行動派だったのね…… うーん、私の知らないナナの一面を見た感じがするわ。
 
「さて、満足する朝食を取りながらでいいから聞いて頂戴。今日のそれぞれの動きについて話をするわ」

 二人は朝食を取りながら無言で頷く。
 
「昨日クララ嬢と接触出来た事は話したと思うけど、今日からコンテスティ邸にお伺いすることになったわ。暫くの間は通い続けると思うから朝からコンテスティ邸にお邪魔して夕方に宿に戻るから二人は朝は私に付き添って夕方に迎えに来て貰うまで宿で待機するか自由行動を取っていいわ」

 本当は専属メイドであるナナも連れていくべきなんでしょうけど、魔力制御(コントロール)訓練だと知ったら後で根掘り葉掘り聞かれて最悪お母さまにまで情報が渡ってしまうかもしれない。
 
 まだその段階ではないと思っているから魔力制御(コントロール)訓練時には二人はいない方が都合がいいのだ。
 
「お、お嬢様…… 私もですか? ナナはお嬢様の傍に居るのが当たり前だと思ってます。それともナナがいると困る事でもあるのですか?」

 クッ、そう言う言い方をされると私が辛いんだよね。私だってナナを引き離すような真似を本当はしたくない。