「お嬢様、朝ですよ。起きてください」

 カーテンが引かれる音と同時に凄まじい光量が私の目を照射してくる。

 まっ、眩しい。私の目が覚める前にオープン・ザ・カーテンは止めて欲しい。
 
「ま、待って、ナナ。私の心の準備が出来る前にカーテンを開くのは止めて欲しいのだけど」

 脳は既に動き出しているのだが、目が開かない。
 
 寝る時が一番幸せという人もいるだろう。勿論、私も寝る前にベッドに飛び込む時はそれなりの幸せを感じる…… が、逆に起きるとき、それも強制的に起こされるときは本当に地獄としか言い様がない。
 
「お嬢様…… お屋敷であるならともかく、今日はクララ様にお会いしに行くのではありませんか? 何の為にコンテスティ領に来たのか思い出してください」

 ナナの言う通りである。全くもって反論の余地がない。
 
 どうして人間という奴はこうなのだろうか…… さっさと起きて準備しなければならない重要な日ではあると分かっているのに目が言う事を聞いてくれない。
 
「分かってるわ、ナナ。でも私の目が言う事を聞いてくれないの。これはきっと目を覚ますのはまだ早いと私の身体が訴えているからなのよ」

 少し間が空いた後にナナが意を決したかの様に私の耳元で呟いてくる。
 
「それではヘンリエッタさんにお嬢様を起こしていただく様にお願いしてきますね」

 その発言を私の耳を通って全身の全細胞に行き渡ると同時に『危険信号』を発動している。
 
 ナナ、あなたはなんて恐ろしい悪魔召喚を行おうとしているのが分かっているの? いや、それよりもヘンリエッタを使う事の意味を理解しているの?
 
 勿論私は上半身を一気に起こして目も強制的に開かせた。
 
 ナナの方を振り向くと、なんとそこにはナナの真横に無言でニコニコしているヘンリエッタが突っ立っていた。
 
 しかし、私が起きた事が分かるとヘンリエッタは悲しそうな顔に変わっていく。
 
「ナナ、貴方…… 自分で何を言っているのか分かってるの? ヘンリエッタの…… その…… 特異性(真正の幼女好き(ガチロリ))に」

 しかし、ナナは『お嬢様は何を言ってるんですか?』と言わんばかりに私の言っていることが理解できていないらしい。