クッ、なかなかセンスあるじゃないのこの子。評価を改めなければならないわね。
 
「いえ、あなたの持っている本は私も購入しようと思っていたのよ。私達案外趣味が合うかもしれないわね」

 その言葉にクララは『パァーッ』と表情が一気に明るくなった。めちゃめちゃ嬉しそう。
 
「ほ、ほ、ほ、本当ですか? わ、わ、私最近追放アンドざまぁ物にハマってまして…… 本当はラブコメ要素が多い方が好きなのですけれど、その方面ですと悪役令嬢物、貴族令嬢モノが多めでたまには他のラブコメ、特に冒険者関連で主人公がパーティから追い出されて恋人がパーティのイケメンに寝取られて、恋人もパーティも失い絶望からどのように這い上がっていくか等に最近手を出し始めたのですが……」

 めっちゃグイグイくるやん。この子本当に小鹿――いや、これが本当のクララ・コンテスティなのかもしれない。
 
 てかオタ特有の早口言葉やめて! 脳みそが処理終わる前にどんどん言葉出すな。というか七歳の口から出てはいけない単語が出ている気がする。
 
「わ、わかったわ。一旦落ち着いて頂戴。ここだと目立つから一旦場所を変えないかしら? そうだわ、お茶でも飲みに行ってそこでお話ししましょう」

 私が一旦クララの暴走を止めに入ると、クララは『ハッ!』とした表情で自分がやらかしてしまった事で顔が青ざめていく。
 
「す、す、す、すみません。つ、つ、つい、う、う、嬉しくて」

 とクララと二人の世界に入りかけたら私に脛を蹴られていない方のチンピラが口を開いた。
 
「テメエ等、何こっち無視して会話はじめとんじゃ、コラ、あ? やんのか?」

 すっかり忘れてました。もう一人の方は脛を擦りながらスーハースーハー小刻みに呼吸している。
 
 こっちはもう目的は果たしてるの。あなたの様なドチンピラに用はなくてよ。
 
 私は威圧をぶつけると、文句を言ってきたチンピラの顔が一気に青くなっていく。足を震わせながら立っていられなくなったのか、尻もちをついてガチガチ震えている。
 
 クララは何が起きたのか理解できていない様子で『えっ?えっ?』と首を傾げている。
 
「このお二人は放っておいて平気そうね。ではお茶に行きましょうか。名前がまだでしたね。私はグラヴェロット子爵家息女マルグリットと申します。あなたの名前をお伺いしても?」