私たちはそれぞれモーレットに入ってからの各自の動きについておさらいすることにした。
 
 ナナは拠点となる宿屋の確保。当面の間は三人部屋でいいでしょう。ナナとヘンリエッタは私を一人部屋にするべきと言っていたが、護衛であるヘンリエッタは共にいるべきという事と、私がナナとヘンリエッタの二人きりにさせたくなかったから。
 
 ナナの貞操が掛かっている可能性があるのよ!
 
 ヘンリエッタはメリッサから受け取ったクララの似顔絵を元に本人が街にいる可能性も考慮して捜索及びコンテスティ家の様子見。
 
 本人が家にいるのであれば出て来るタイミングを見計らって、どうにかして知り合いになる機会を見つけないといけない。
 
 お母さまからも言われた様に、家に直接言って呼び出す事は出来ないという無駄に高難易度ミッション。
 
 私は街を散策しながら本屋に行く。クララが私と同じ読書好きという事から本屋にいる可能性も高いし、クララの容姿も似顔絵を見てるし何より十八歳の時を知っているから本人を見れば七歳とはいえ、流石に私の本能が理解するはず。
 
 そんな話をしながらモーレットに入った私たちはそれぞれがミッションを担当すべく、バラバラに散っていった。
 
 近場で魔獣を狩るような場所が少ないからか冒険者の数は少ない印象の様に見える。
 
 だからガルガダに比べてのんびりとしたイメージだ。
 
 隙間なく敷き詰められた石畳に立ち並ぶ建物は同系色のタイル張りの壁で清潔感が感じられる。第一印象はとても綺麗でいい街だ。
 
 それでも……
 
「お嬢ちゃんさあ、ぶつかっておいてそりゃないんじゃねえの?」

 こういう問題を起こす馬鹿はどこにでも現れる。
 
 声がする方に視線をやると、二人のガタイの良いチンピラが身なりの良い少女に因縁をつけているように見える。
 
 少女はぶつかられた際に落としたであろう荷物を拾って大事そうに抱えながらカタカタ肩を震わせている。
 
「ヒッ、ご、ご、ご、ごめんなさい。わ、わざとではないんです……」

 私は少女の後ろ姿を捉えているため、表情を伺う事はできないが、チンピラの一人はどうも大股開きをしている所に少女がぶつかったであろう状況から察するに脚を少女の前に差し出してわざとぶつからせて因縁つけようって事なのでしょう。