「フフフッ、あなた、面白いのね。人前で笑ってしまうなんて淑女としては反省しないといけないわね」

 イザベラさんはフィルミーヌ様の肩に手をおいて『今のは仕方ない』とでも言いたそうに満面の笑みで頷いている。

「私の前に立ってくれた時、とってもかっこよくて素敵だったわ。騎士様かと思ってしまったもの」

 き、騎士? わ、わたしが? で、でもわ、わたしにとってはボッチから救ってくれたフィルミーヌ様こそが私の騎士様だから……
 
 そんなわたしでもフィルミーヌ様のお役に立てるのであれば騎士になりたい。お役に立ちたい。か、変わりたい
 
 違う、変わらないといけないんだ。わたしがフィルミーヌ様の本当の騎士になるために!
 
 この日を境に私は体を鍛え始めたのだ。願いを現実にするために
 
 
………
……



◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「戻りました。」

「どこから?」

 フィルミーヌ様は不思議そうな顔をして私を見ている。私の事を見つめたまま時が止まってしまえばいいのに。と、思ったことは一度や二度はありません。
 
 しかし、このままではいけない。妄想から戻りましたなんて恥ずかしくて言えない。一旦無理やりにでも話をそらさないと。

「パラスゼクルについたら、生活費をまずは稼がないといけませんね」

 私は国を渡った後の事を考えなければならない。フィルミーヌ様に不自由な生活などさせられない。可能な限りお金を稼いで、できる限り良い宿泊施設にお連れしないといけない。
 
 そして、ここで間違えてはいけないのが、泊まる部屋は一部屋。ベッドは二つの部屋。何故って? 一つはイザベラに使用してもらって、もう一つは「フィルミーヌ様を(ベッドの中まで)お守りしないといけませんから」とかいいつつ一緒のベッドに入っちゃう的な?
 
 フフッ、フフフッ、かんっぺきね!なーてんいう考えをしていたらイザベラに肩を叩かれた。
 
「ん? どうしたの? イザベラ?」

 イザベラは諭すような顔をして首を左右に振り、私に訴えかけるのだ。『黙っておくから考えを改めなさい』とでも言いたげだ。私の心を読まないで貰えますか?

「せめて実家によって自分のお金でも持ってこれればよかったんだけど、取りに行くこともできない状態だし。」