私は今ナナとヘンリエッタと共にコンテスティ領に向かっている。
 
 時折、街道に低ランク魔獣が現れるものの護衛であるヘンリエッタが難なく切り裂いていく。
 
 中々綺麗な剣さばきをしている。コンパクトだが、しっかりと基礎に則った騎士のお手本の様な動きをする。
 
 なるほど、最年少小隊長候補というのも(あなが)ち間違いではない事が良く分かる。
 
 こう遠目から見ると、初めて会った時の印象通りクールな女騎士なんだけどねえ。
 
 私かナナを目の前にすると一気に顔面だらしない女に早変わりするのが勿体ない。
 
 これで真正の幼女好き(ガチロリ)が趣味じゃなければ……。
 
 そんなヘンリエッタが倒した魔獣を背にこちらに向かってくる姿はとても嬉しそうだ。
 
 その様子はまるで枝を投げて咥えて戻ってくる飼い犬の様に見える。
 
 まあ、あまりつっけんどんにしても可哀想だから飴くらいはくれてやらねばならない。
 
 ククク、これが出来る淑女の条件って奴よね。
 
 そんな事を考えていたらヘンリエッタが馬車まで戻って来た。
 
「お嬢様、ナナ殿、無事に魔獣を討伐してまいりました」

 見るがよい、ヘンリエッタ。このマルグリットのハイパー淑女タイムって奴をね。

「ヘンリエッタ、ご苦労様です。見事な腕前ですね、また魔獣が出たらお願いしますね」

「は、はひっ、おっおまかせくだしゃひ」

 私がニッコリと語りかけるとヘンリエッタは嬉しそうに頬を紅潮させ、鼻の穴を『プクーッ』と膨らませてニンマリしている。
 
 あー、もう全部台無しだよ。折角ついさっきまでクールな女騎士に見えて感心したのに、今の表情じゃ只のド変態だよ。
 
 ナナもその光景に可笑しかったのか、『クスクス』笑っている。
 
「ヘンリエッタさんは本当にお嬢様が大好きなんですねぇ」

 ナナの笑顔にさらにだらしない顔をするヘンリエッタ。
 
「いひぇ、しょんな…… ナナ殿も同じくらいしゅ、しゅ、しゅひぃ」

 言えてないし、声が小さいからナナには届いていないぞ。傍から見てるとヘンリエッタの将来が心配なってくる。
 
 ふと目を馬車の外にやると街が見えて来た。
 
「ナナ、街が見えてきたわ。あそこが目的の街なのかしら?」

「はい、今見えている街が目的地の『モーレット』になります」