「ええ、実はね…… うちの娘って潜在魔力量が桁外れに多いみたいなの。それを聞いた旦那様が家庭教師を雇って訓練をしていたのだけれど、たまたま私が見学していた時に魔力暴走を起こしてしまって…… 娘は魔力耐性もあるから軽傷で済んだのだけれど、私は魔力耐性が無くて瀕死の重傷を負ってしまったの」

 なるほど、その時に余程凄惨な目にあったのだろう。マルガレーテが震えているのがよくわかる。

「家庭教師はどうしたの?」

「家庭教師もクララのすぐ傍にいたから暴走に巻き込まれてしまって、重傷を負ってしまったわ。傷が癒えた直後に責任を取ると言って辞任してすぐに居なくなったわ」

 はぁ~、責任を取るのであれば魔力暴走しない様に訓練させてから辞任しなさいよ…… ていうかただの逃げじゃないそれって……。
 
「旦那はどうしてるの?」

「えっと…… 旦那様は調べ物があると言って王立図書館に通ってるわ。私の容体を労わってくれたりしてるからあまり通えてないみたいだけど」

 夫婦そろって王都にいるのね……。 しかも娘がそんな事態を引き起こしたら家でどんな扱いされるかわかってるのかしら?
 
「ねえ、マルガレーテ。クララちゃんが一人であの家にいる意味わかってる?」

「ど、どう言う事かしら? 使用人たちもいるし暮らすには何の問題もないと思ってるのだけど……」

「魔力暴走を起こした直後に領主夫婦が揃って王都に逃げて、問題を引き起こした娘が一人残されるって…… そんなの使用人たちに腫物を扱うようにされてると思うわよ。万が一自分たちが魔力暴走に巻き込まれでもしたらと思って、必要以上に近寄らない様にしてるんじゃないかしら?」

「じゃ、しゃあ、あの子は今……」

 カタカタ震えてる…… やばいわ、この子本気で考えていないっぽい。とはいえ、解決策かあ…… 私は魔力がほとんどないから制御訓練とかちゃんとやってなかったのよねえ。だから私が家庭教師とか無理だし……。
 
 誰かが改めて家庭教師になって教える? いや、また逃げられる可能性がある…… どうしようかと悩んでいたらメリッサが待ってましたと言わんばかりに口を開いた。
 
「横から失礼いたします。奥様、私の方から提案させて頂きたい解決策がございます」

 流石メリッサ。めっちゃ自信満々っぽい。今は何でもいいから解決案が欲しい所だったのよ。